この記事のポイント
MUBの特徴
iシェアーズ・ナショナル・ミュニ・ボンドETF(MUB)は、ブラックロックが運用するETFで、米国の地方債(Municipal Bonds)を主要投資対象としています。S&PナショナルAMTフリー・ミュニシパル・ボンド・インデックスに連動し、投資適格の地方債を幅広くカバー。安定性と税制優遇が特徴です。
まず、MUBの最大の魅力は連邦所得税が免除される点です。米国では地方債の利息収入が連邦税非課税となり、高税率の投資家にとって実質リターンが向上します。日本人投資家の場合、為替リスクや日本の税制を考慮する必要がありますが、円安傾向が続く中、ドル資産としての価値も見逃せません。
次に、低ボラティリティが挙げられます。地方債は国債に近い信用力を持ち、株式市場の急落時にも価格変動が抑えられる傾向があります。ポートフォリオに安定性を求める投資家にとって、MUBはリスクヘッジの役割を果たします。さらに、経費率はわずか0.07%と低コストで、長期投資の負担を軽減します。
また、MUBは毎月配当を支払うため、定期的なキャッシュフローを重視する投資家に適しています。配当再投資を選択すれば、複利効果で資産成長を加速させることも可能です。
項目 | 詳細 |
---|---|
運用会社 | ブラックロック |
経費率 | 0.07% |
投資対象 | 米国地方債(投資適格) |
配当頻度 | 毎月 |
- 連邦税免税による実質リターン向上。
- 低ボラティリティでポートフォリオの安定化。
- 低経費率で長期投資に最適。
- 毎月配当によるキャッシュフロー確保。
MUBの株価・推移・成長率(パフォーマンス)
※S&P500指数と比較
MUBの株価は、地方債市場の動向や金利環境に大きく影響されます。過去10年間の株価推移を見ると、安定した値動きが特徴です。2020年のコロナショック時には一時的な下落が見られたものの、迅速に回復。2022~2023年の米金利上昇局面では価格が下落した時期もありましたが、長期的なリターンは安定しています。
以下は、MUBの年別トータルリターン(配当再投資込み、ドルベース)の推移です。
年 | トータルリターン(%) |
---|---|
2015 | 2.8 |
2016 | 0.2 |
2017 | 5.4 |
2018 | 1.3 |
2019 | 7.5 |
2020 | 5.2 |
2021 | 1.6 |
2022 | -7.9 |
2023 | 6.2 |
2024 | 3.5 |
過去10年間の平均リターンは約2.5%で、債券ETFとしては堅実な成績です。金利上昇期には価格が下落する傾向があるものの、配当再投資による複利効果で長期リターンは安定。2025年はFRBの利下げ観測から、MUBの価格上昇が期待される一方、為替レート(1ドル=150円想定)もリターンに影響を与えます。
MUBの成長率は株式ETFに比べると控えめですが、安定性を重視する投資家には十分な魅力があります。特に、リスクを取らずに資産を保全しつつ、定期収入を得たい場合に適しています。
MUBのセクター構成
MUBは地方債ETFであるため、伝統的な「セクター」ではなく、債券の発行目的や地域による分類が中心です。主に州や地方政府が発行する債券で、インフラ、教育、医療などの公共事業に資金が充てられます。
以下は、2025年3月時点の主な用途別構成割合です。
用途 | 割合(%) |
---|---|
一般債(州・地方) | 35.2 |
交通インフラ | 20.8 |
教育関連 | 15.6 |
医療・病院 | 12.4 |
水道・下水道 | 10.5 |
その他 | 5.5 |
地域別では、カリフォルニア、ニューヨーク、テキサスなどの経済規模が大きい州の債券が上位を占めます。これにより、MUBは米国経済の広範な動向を反映しつつ、地域ごとのリスク分散が図られています。
この構成は、MUBが単一のセクターや地域に偏らない分散投資を実現していることを示します。金利感応度(デュレーション)は約6年で、市場金利の変動に適度に反応するバランスが取れています。
MUBの構成銘柄
MUBは約5,500の地方債で構成されており、単一銘柄の割合はごくわずかです。以下は、2025年3月時点の上位5銘柄(債券)の例です。
債券名 | 割合(%) |
---|---|
カリフォルニア州一般債 | 2.1 |
ニューヨーク市交通債 | 1.8 |
テキサス州教育債 | 1.5 |
イリノイ州インフラ債 | 1.3 |
フロリダ州水道債 | 1.2 |
MUBの構成銘柄は投資適格(BBB以上)が中心で、デフォルトリスクは極めて低いです。ブラックロックの厳格なスクリーニングにより、信用力の高い債券が選ばれています。個々の債券の満期は1~30年と幅広く、平均満期は約10年。これにより、短期的な金利変動の影響を抑えつつ、長期的な利回りを確保しています。
MUBに長期投資した場合のシミュレーション
MUBに100万円(為替レート1ドル=150円、1株108ドルで約62株購入)を投資した場合、50年間の資産成長をシミュレーションします。前提として、年平均リターン2.5%、配当再投資、経費率0.07%、為替レート変動なしとします。
- 10年後:約128万円(年平均2.5%の複利成長)
- 30年後:約210万円
- 50年後:約344万円
配当再投資により、複利効果が顕著に現れます。ただし、金利上昇や為替変動(円高)が発生した場合、リターンは圧縮される可能性があります。逆に、円安が進めば円ベースのリターンは向上します。
年数 | 資産額(万円) |
---|---|
10年 | 128 |
30年 | 210 |
50年 | 344 |
このシミュレーションは、MUBの安定性を活かしつつ、長期で資産を増やす可能性を示しています。
MUBの配当タイミングと直近の配当
MUBは毎月配当を実施し、投資家に定期的なキャッシュフローを提供します。2025年3月時点の直近配当は1株当たり約0.25ドル(年率換算利回り約2.8%)。為替レート150円で計算すると、1株当たり月37.5円、年450円です。
項目 | 詳細 |
---|---|
配当頻度 | 毎月 |
直近配当(1株) | 0.25ドル(37.5円) |
配当は金利環境や債券の利回りによって変動しますが、過去10年は安定推移。毎月分配は、配当金生活や再投資戦略に柔軟に対応可能です。
MUBで配当金生活は可能か?
月10万円の配当金生活を実現するには、MUBの投資額を計算します。年利回り2.8%、為替レート150円、1株108ドルで試算。
- 年間配当:1株当たり3ドル(450円)
- 月10万円(年120万円)÷450円=約2,667株
- 必要投資額:2,667株×108ドル×150円=約4,320万円
目標配当(月) | 必要投資額(万円) |
---|---|
5万円 | 2,160 |
10万円 | 4,320 |
20万円 | 8,640 |
4,320万円は高額ですが、MUBをポートフォリオの一部として活用し、他の高配当ETFと組み合わせることで、必要額を抑えつつ目標達成が可能です。
MUBとよく比較されるETFは?
MUBは地方債ETFとして、以下のようなETFと比較されます。
1. VTEB(バンガード・タックスエグザンプト・ボンドETF)
- 経費率0.05%とMUBより低コスト。
- 構成はMUBと類似だが、銘柄数がやや少ない。
2. TFI(SPDRニューアム・ミュニシパル・ボンドETF)
- 経費率0.23%と高め。
- 短期債の割合が高く、金利リスクが低い。
項目 | MUB | VTEB |
---|---|---|
経費率 | 0.07% | 0.05% |
銘柄数 | 約5,500 | 約4,800 |
平均利回り | 2.8% | 2.7% |
デュレーション | 6年 | 5.8年 |
MUBは銘柄数の多さと安定性で優位ですが、コスト重視ならVTEBも魅力的です。
MUBと合わせてポートフォリオに加えたほうがいいETFは?
MUBの安定性を活かしつつ、リターンを高めるには以下のようなETFを組み合わせると効果的です。
1. VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)
- 米国株式全体をカバーし、成長性を追加。
- 経費率0.03%。
2. VYM(バンガード・高配当利回りETF)
- 高配当株に投資し、配当収入を増強。
- 経費率0.06%。
ETF | 特徴 |
---|---|
VTI | 成長性、分散性 |
VYM | 高配当、安定収入 |
MUB:VTI:VYMを4:4:2の割合で組み合わせると、安定性と成長性のバランスが取れます。
MUBのETF Score (ETFのおすすめ度)
- 成長性:過去5年の平均リターン(キャピタルリターン)をもとに算出
- 配当リターン:過去5年の平均配当利回りをもとに算出
- 運用コスト:経費率をもとに算出
- リスク分散度:投資対象銘柄数・セクター分散度をもとに算出
- 安定性:過去5年の平均騰落率をもとに算出
※各指標は当サイトにおける基準で設定
まとめ
MUBは、連邦税免税の地方債ETFとして、低リスクで安定したリターンを提供します。毎月配当と低ボラティリティは、配当金生活やポートフォリオの安定化に最適。VTIやVYMと組み合わせることで、成長性と収入の両立が可能です。為替リスクや金利変動に留意しつつ、長期投資の基盤としてMUBを活用しましょう。
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資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。