VTIとSHVの「ベスト比率」は?成長と安全を両立するポートフォリオを徹底解説

ETF

この記事のポイント

VTIは市場全体の成長を享受し長期的な資産最大化を目指す「攻め」のコア資産、SHVは低リスク・安定収入を提供する「守り」の安全資産である。長期リターンではVTIが圧倒的に優位だが、SHVは市場暴落時にも価格変動が極めて少なく、資産を守るヘッジ機能を持つ。
SHVは毎月分配金(利息収入)があり、特に金利の高い局面ではVTIより高いインカムゲインを安定的に提供できる。
VTIとSHVを組み合わせることは、価格変動リスクを抑えつつ、暴落時にリバランスでVTIを買い増すための資金源を確保する合理的なリスク管理戦略である。
執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。

VTIとSHV、どちらがリターンが大きいか(過去実績をもとにシミュレート)

過去実績を元にした場合、どちらが儲かるか?

VTIのほうがリターンが大きい

VTIは高い成長率を期待できるリスク資産の代表格ですが、SHVは価格変動リスクが極めて低く、主に利息収入を目的とする安全資産の代表です。

この二つを比較すると、長期的なリターンでは、やはり企業の成長を享受するVTIがSHVを大きく上回ります。しかし、SHVは金利が高い局面で安定したリターンを提供し、特に市場が暴落した時期には資産を守るという重要な役割を果たします。

VTIとSHVの過去リターン
期間VTI 最終資産額(円)SHV 最終資産額(円)VTI リターン(%)SHV リターン(%)
1年1,220,0001,050,00022.05.0
3年1,650,0001,120,00065.012.0
5年2,100,0001,180,000110.018.0
10年3,800,0001,250,000280.025.0
15年5,500,0001,350,000450.035.0
20年8,200,0001,450,000720.045.0

※データは特定の期間における過去の想定リターンに基づき算出(手数料・税金等は考慮せず)

VTIとSHVの特徴

VTIとSHVは、資産クラスから目的、リスク特性まで、全てが対極にあるETFです。

VTIは米国の全企業に分散投資することで、市場全体の成長と企業の利益拡大を目指します。

一方、SHVは米国の1~12ヶ月の超短期国債に投資しており、キャピタルゲイン(価格上昇)はほとんど期待せず、安定した利息収入(インカムゲイン)を得ることを目的としています。

項目VTI (Vanguard Total Stock Market ETF)SHV (iShares Short Treasury Bond ETF)
正式名称バンガード・トータル・ストック・マーケットETFiシェアーズ 超短期米国債 ETF
ティッカーVTISHV
設定日2001年5月24日2007年1月5日
運用会社バンガード (Vanguard)ブラックロック (BlackRock)
投資対象米国株式市場のほぼ全て (約4,000銘柄)残存期間1年未満の超短期米国債
目的米国株式市場全体の成長と同等かそれ以上のトータルリターン低リスクで安定的な利息収入
資産分類株式(エクイティ)債券(フィックスドインカム)
経費率0.03%0.15%
分配金頻度年4回(四半期)毎月
平均年率リターン(長期想定)約8%約3%
金利変動リスク影響小(間接的)影響極小(短期債のため)
価格変動リスク高い非常に低い
最適な投資目的長期的な資産形成、成長資金の保全、一時的な待機
株式との相関性極めて高い(ほぼ1.0)低い(分散効果が高い)
市場での流動性極めて高い高い
税務上の注意点(日本)外国税額控除の対象基本的に外国税額控除の対象外
金利と価格の関係間接的逆相関が極めて小さい(価格は安定)
Google Finance

VTIとSHVのパフォーマンス比較(騰落率)

VTIとSHVの年間騰落率を比較すると、VTIのボラティリティの高さが際立ちます。

特に金融危機に見舞われた2008年のような年には、VTIが大幅にマイナスとなる一方で、SHVは安定したプラスのリターンを維持しています。これは、景気変動に左右されにくい米国債の利息収入を基盤としているためです。

長期的に見ると、VTIは高い成長率を示す年が多く、資産拡大の源となりますが、その道のりは荒いことがわかります。SHVの騰落率は常に低く、価格の安定性を最優先する投資家にとって理想的ですが、資産を増やす力はほとんどありません

VTIとSHVの騰落率
VTI 年間騰落率(%)SHV 年間騰落率(%)VTI 終値(USD)SHV 終値(USD)
20054.93.545.00100.20
200613.54.051.08100.80
20075.34.553.78101.40
2008-37.02.533.88103.95
200926.50.542.84104.47
201017.50.350.33104.78
20110.50.150.58104.88
201215.90.258.62105.09
201333.50.178.27105.19
201412.50.288.04105.40
20150.50.388.48105.72
201612.00.599.10106.25
201721.01.0119.91107.31
2018-4.52.0114.48109.46
201931.02.5149.92112.20
202021.00.5180.70112.76
202125.00.1225.88112.87
2022-20.01.5180.70114.56
202325.54.0226.79119.14
2024 12.05.0253.90125.09

※データは過去の株価変動と米国短期金利に基づき作成した想定値

VTIとSHVのセクター構成比較

VTIは株式ETFであるため、情報技術、金融、ヘルスケアなど多岐にわたるセクターの企業の業績に依存します。

一方、SHVは債券ETFであり、特定の産業セクターに投資するわけではありません。その資産はすべて米国政府が発行する超短期国債に集中しています。

資産構成VTI 構成比率(%)SHV 構成比率(%)備考
情報技術 (IT)29.00.0VTIの成長の中心
金融13.00.0VTIの主要セクターの一つ
ヘルスケア13.50.0VTIの主要セクターの一つ
米国債券(超短期)0.0100.0SHVの全資産、利息収入の源泉
現金およびその他1.00.0ETF運用上のわずかな現金等
セクター計99.00.0VTIは複数のセクターに分散
債券計0.0100.0SHVは単一資産クラスに特化

VTIとSHVの構成銘柄比較

VTIの構成銘柄は、アップルやマイクロソフトなど、時価総額の大きな米国企業群で構成されており、これらの成長がVTIのリターンに直結します。

一方、SHVの構成銘柄は、残存期間1年未満の米国財務省証券(トレジャリービル)です。企業のように個別の業績で株価が変動するのではなく、発行体は米国政府であるため信用リスクは極めて低く、その価格は市場金利の動向に連動します。特にSHVは超短期債であるため、長期債と比べて金利変動による価格下落リスク(金利リスク)も非常に小さいのが特徴です。

つまり、VTIは「民間企業の成長」、SHVは「米国政府の信用と短期金利」に投資していると言えます。

順位VTI 構成銘柄 (日本語名)備考SHV 構成銘柄 (日本語名)
1アップル米国巨大テクノロジー企業米国財務省証券(残存期間1-3ヶ月)
2マイクロソフト米国巨大テクノロジー企業米国財務省証券(残存期間3-6ヶ月)
3アルファベット (Google) (クラスA)検索・広告大手米国財務省証券(残存期間6-9ヶ月)
4アマゾン・ドット・コムEコマース・クラウドコンピューティング大手米国財務省証券(残存期間9-12ヶ月)
5エヌビディアAI・半導体開発大手米国財務省証券(その他)
6メタ・プラットフォームズSNS・テクノロジー企業該当なし
7テスラ電気自動車大手該当なし
8バークシャー・ハサウェイ (クラスB)コングロマリット企業該当なし
9ユナイテッドヘルス・グループヘルスケア・保険大手該当なし
10エクソン・モービルエネルギー大手該当なし

VTIとSHVに投資した場合の成長率シミュレーション比較

VTIを年率8%、SHVを年率3%(超短期金利の長期平均を想定)と仮定し、初期投資100万円を50年間運用した際の資産額をシミュレーションしました。

VTI単独投資は圧倒的な成長を見せますが、SHVはローリスクで緩やかに資産を増やすのみです。注目すべきは両方保有するパターンで、リターンはVTI単独に劣後しますが、SHVの存在により、市場暴落時の下落幅を抑える効果が期待できます。

VTIとSHVに投資した場合の成長率シミュレーション比較
期間(年)VTI 単独(100万投資) 最終資産額(円)SHV 単独(100万投資) 最終資産額(円)VTI 50万 + SHV 50万 最終資産額(円)
51,469,0001,159,0001,314,000
102,159,0001,344,0001,752,000
153,172,0001,558,0002,365,000
204,661,0001,806,0003,184,000
256,848,0002,093,0004,285,000
3010,063,0002,427,0005,758,000
3514,785,0002,814,0007,799,000
4021,725,0003,262,00010,544,000
4531,939,0003,781,00014,249,000
5046,901,0004,384,00019,258,000

※VTI 年率8%、SHV 年率3%の想定リターンで算出

VTIとSHVのおすすめの投資比率とそのシミュレーション

VTIとSHVを組み合わせる最大の目的は、リスク(価格変動)の低減です。

VTIの比率が高いほどリターンは高まりますが、暴落時の下落幅も大きくなります。ここでは、リスク許容度に応じて「アグレッシブ型(VTI多め)」「バランス型」「保守型(SHV多め)」の3パターンで50年シミュレーションを行いました。

若年層やリスクを積極的に取れる方はアグレッシブ型が向いていますが、資産を守りながら緩やかに増やしたい退職が近い方は保守型が適しています

VTIとSHVのおすすめの投資比率とそのシミュレーション
期間(年)アグレッシブ型 VTI 80%:SHV 20%(円)バランス型 VTI 50%:SHV 50%(円)保守型 VTI 20%:SHV 80%(円)
51,424,0001,314,0001,204,000
102,010,0001,752,0001,463,000
152,900,0002,365,0001,811,000
204,183,0003,184,0002,243,000
256,031,0004,285,0002,773,000
308,702,0005,758,0003,428,000
3512,549,0007,799,0004,238,000
4018,088,00010,544,0005,236,000
4526,086,00014,249,0006,470,000
5037,605,00019,258,0008,003,000

※VTI 年率8%、SHV 年率3%の想定リターンで算出

VTIとSHVの配当比較

VTIとSHVは、どちらも四半期に一度以上の頻度で配当(SHVは利息収入が主)を支払いますが、その性質は大きく異なります。VTIは企業の業績に連動するため、配当額に変動があります。一方、SHVは超短期債の利息を毎月分配金として支払うことが特徴です。これにより、SHVは非常に安定したキャッシュフローを毎月提供することができ、インカムゲインを重視する投資家にとっては非常に魅力的です。

支払月VTI 1口あたり配当金 (USD)VTI 1口あたり配当金 (円換算)SHV 1口あたり配当金 (USD)SHV 1口あたり配当金 (円換算)
1月0.40060.0
2月0.45067.5
3月0.850127.50.50075.0
4月0.42063.0
5月0.48072.0
6月0.950142.50.52078.0
7月0.45067.5
8月0.40060.0
9月0.900135.00.55082.5
10月0.48072.0
11月0.50075.0
12月1.100165.00.55082.5
合計 (年間)3.800570.05.200780.0

※直近1年の実績を基にした想定値(為替レートは1ドル150円で計算)

VTIとSHVに投資した場合の配当金シミュレーション比較

ここでは、VTIの利回りを1.5%、SHVの利回りを3.0%(高金利局面を想定)として、投資元本に対する年間配当金(税引き前)を日本円で比較しました。VTIは成長を主眼としているため利回りは低いですが、SHVは短期金利が高ければVTIよりも高いインカムゲインをもたらす可能性があります。

投資元本(円)VTI 年間想定配当利回り(%)VTI 年間想定配当金(円)SHV 年間想定配当利回り(%)SHV 年間想定配当金(円)
100万円1.515,0003.030,000
300万円1.545,0003.090,000
500万円1.575,0003.0150,000
1,000万円1.5150,0003.0300,000
3,000万円1.5450,0003.0900,000
5,000万円1.5750,0003.01,500,000

※配当利回りは概算値、税金等は考慮しない

VTIとSHV、おすすめは?

VTIは「攻め」の資産、SHVは「守り」の資産です。

特に、両方を組み合わせることは、ポートフォリオのリスク管理において非常に優れた戦略です。SHVは価格変動が極めて小さいため、株式市場が大きく下落しても資産価値が守られ、その資金をVTIが安くなったタイミングで買い増す(リバランス)ことで、将来的なリターンを向上させる効果が期待できます。

観点VTI (株式/成長資産)SHV (超短期債券/安全資産)両方保有 (攻守バランス型)
最大のメリット経済成長と共に資産が最大化する価格変動リスクが極めて低く、信用力が高いリスクを抑えつつ、市場の成長を享受できる
最大のデメリット短期的に大きな下落リスクを伴う長期的な資産増加は期待できず、インフレに弱い運用コストが分散され、リターンがVTI単独に劣後する
投資目的資産の最大化、老後資金の形成資金の待機場所、短期的な安定運用リスクの低減とリターンの両立
インカムゲイン低い(企業の利益に依存し変動)中程度(金利水準に依存し、毎月分配)VTIの成長とSHVの安定配当を両立
リスク耐性中程度(市場全体と同じ変動を経験)非常に高い(金利リスクが小さい)中~高(リスク資産と安全資産で相殺効果)
投資初心者へのおすすめ度高い(コア資産の王道)中程度(役割を理解した上で併用)高い(リスクを抑えながら投資の基本を学べる)
資産クラスリスク資産安全資産(現金代替)複合資産

FAQ(よくある質問)

Q
VTIとSHVの組み合わせは、どのような投資家に向いていますか?
A

この組み合わせは、特に「大きな下落を経験したくないが、資産の成長も諦めたくない」と考える投資家に向いています。退職が近い方や、リスク許容度が低いが、インフレに負けないように資金を運用したいと考える保守的な投資家にとっては、SHVを多めに組み込むことで安心感を得られます。

Q
SHVの利回りはなぜ VTI よりも安定しているのですか?
A

SHVは米国政府が発行する超短期の国債に投資しているため、価格変動の要因である金利リスクが非常に小さいからです。また、株式と違って企業の業績に左右されず、得られるのは政府の信用に基づく「利息」のみであるため、株式のように大きな変動がなく安定しています。

Q
SHVはインフレに強い資産ですか?
A

いいえ、SHVはインフレには弱い資産です。インフレ率がSHVの利回り(分配金利回り)を上回る場合、実質的な購買力は低下してしまいます。SHVの主な役割は「価格の安定」であり、「購買力の維持(インフレヘッジ)」は金や不動産といった他の資産クラスが担う役割です。

Q
VTIのポートフォリオにSHVを組み込むメリットは、暴落時以外にありますか?
A

暴落時以外にも大きなメリットがあります。それは「心理的な安定」です。SHVの存在により、市場が少し下落した際にパニック売りを防ぎやすくなります。また、SHVは毎月分配金が出るため、これを再投資資金に充てたり、他の支出に回したりと、キャッシュフローのコントロールがしやすくなる点もメリットです。

Q
VTIとSHVを組み合わせた場合、リバランスはどのように行えば良いですか?
A

リバランスは、設定した目標比率(例:VTI 70%:SHV 30%)から大きく乖離した場合に行います。例えば、VTIが急騰して比率がVTI 80%になったら、利益の出たVTIの一部を売却し、SHVを買い増します。逆にVTIが暴落したら、SHVを売却してVTIを安く買い増します。これにより、自動的に「安い資産を買い、高い資産を売る」規律的な投資が可能になります。

まとめ

VTIとSHVは、長期投資における「攻め」と「守り」という、ポートフォリオの両極を担う非常に重要なETFです。VTIは米国の成長エンジンに投資することで、長期で最も大きな資産の増加を目指すコア資産です。一方、SHVは超短期米国債に投資することで、価格変動リスクを抑え、安定した利息収入と危機時のヘッジ機能を提供します。

VTI単独では高いリターンが期待できますが、その変動の荒さに耐えられない投資家も多くいます。SHVを適切な比率で組み合わせる戦略は、リターンを適度に追求しながら、リスクを大きく低減させる「現代ポートフォリオ理論」に基づいた合理的な選択です。

ご自身の投資目的と心理的な安定を最優先し、最適なVTIとSHVの比率を見つけて運用していきましょう。

執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。

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