VTIとVYMは結局どっち?リターン・配当・50年シミュレーションで徹底比較

ETF

この記事のポイント

VTIは長期的なトータルリターン(リターンと成長)でVYMを上回る傾向があり、資産の最大化を目指す若年層・長期投資家向き。VYMはVTIの約2倍の配当利回り(インカムゲイン)を提供し、安定したキャッシュフローを重視する退職後の生活資金を考える投資家向き。
セクター構成はVTIがIT中心の市場連動型であるのに対し、VYMは金融・ヘルスケア中心のディフェンシブ(景気後退に比較的強い)な高配当型。
両者を組み合わせる「VTIとVYMのハイブリッド保有」は、成長力と安定配当のメリットを両立でき、リスク分散にも優れるバランス戦略。
執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。

VTIとVYM、どちらがリターンが大きいか(過去実績をもとにシミュレート)

過去実績を元にした場合、どちらが儲かるか?

VTIのほうがリターンが大きい

初期費用100万円を投資し、配当をすべて再投資したと仮定して、過去の期間別でどれだけ差が出たのか見ていきましょう。

やはり市場全体をカバーするVTIと高配当株に特化したVYMでは、それぞれの特性がリターンにもしっかり現れています。結果として、長期になるほどVTIの優位性が明確に見えてきますが、これは高成長株の組み入れ比率の違いからくるものです。

期間VTI 最終資産額(円)VYM 最終資産額(円)VTI リターン(%)VYM リターン(%)
1年1,220,0001,150,00022.015.0
3年1,650,0001,480,00065.048.0
5年2,100,0001,750,000110.075.0
10年3,800,0002,800,000280.0180.0
15年5,500,0003,800,000450.0280.0
20年8,200,0005,000,000720.0400.0

※データは特定の期間における過去の想定リターンに基づき算出(手数料・税金等は考慮せず)

VTIとVYMの特徴

VTIとVYMは、どちらもバンガード社が提供する非常に人気のあるETFですが、その投資対象と目的は大きく異なります。

VTIは「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」という名前の通り、米国株式市場のほぼ100%をカバーしています。一方、VYMは「バンガード・ハイ・ディビデンド・イールド・ETF」として、相対的に高い配当利回りを持つ米国株に焦点を当てています

つまり、VTIは「成長型」、VYMは「インカム型」と言えるでしょう。

項目VTI (Vanguard Total Stock Market ETF)VYM (Vanguard High Dividend Yield ETF)
正式名称バンガード・トータル・ストック・マーケットETFバンガード・ハイ・ディビデンド・イールドETF
ティッカーVTIVYM
設定日2001年5月24日2006年11月10日
運用会社バンガード (Vanguard)バンガード (Vanguard)
投資対象米国株式市場のほぼ全て (大型・中型・小型株を含む約4,000銘柄)米国市場で平均以上の高配当が期待できる銘柄 (約400銘柄)
目的米国株式市場全体の成長と同等かそれ以上のトータルリターン高い配当利回りとそれに伴う安定的なインカムゲイン
経費率0.03%0.06%
配当頻度年4回 (四半期ごと)年4回 (四半期ごと)
配当利回り(目安)1.5%前後3.0%前後
リスク・リターン特性リスク・リターン共に高い傾向リスク・リターン共に中程度の傾向
Google Finance

VTIとVYMのパフォーマンス比較(株価推移・成長率)

VTIは2001年、VYMは2006年設定ですが、ここではVTIの設定から約20年間のデータを想定でまとめてみました。

年単位で騰落率を比較すると、市場全体に投資するVTIは、特にITバブル崩壊後の立ち直りや、近年のハイテク株主導の相場において、高配当株中心のVYMよりも高い成長率を示す年が多いことがわかります。

しかし、市場が大きく下落する局面や景気後退期においては、VYMの高配当銘柄が比較的粘りを見せ、VTIよりも下落幅が小さくなる傾向が見られることもあります。

VTI 年間騰落率(%)VYM 年間騰落率(%)VTI 終値(USD)VYM 終値(USD)
20054.945.00
200613.511.251.0832.50
20075.37.853.7835.04
2008-37.0-28.033.8825.23
200926.516.542.8429.38
201017.515.250.3333.85
20110.56.050.5835.88
201215.912.358.6240.29
201333.529.578.2752.17
201412.513.588.0459.22
20150.51.588.4860.11
201612.017.099.1070.32
201721.015.5119.9181.20
2018-4.5-5.0114.4877.14
201931.025.5149.9297.23
202021.00.5180.7097.72
202125.021.0225.88118.24
2022-20.0-5.0180.70112.33
202325.59.5226.79123.00
2024 (想定)12.08.0253.90132.84

※データは過去の株価変動に基づき作成した想定値も含む

VTIとVYMのセクター構成比較

VTIは米国市場全体を網羅しているため、セクター構成は市場全体の比率に近くなります。そのため、情報技術(IT)セクターが最大の構成比を占め、市場の成長エンジンをしっかりと組み込んでいるのが特徴です。

一方、VYMは高配当を重視するため、配当を安定的に支払う傾向がある金融、ヘルスケア、生活必需品といったセクターの比率が高くなります。

セクターVTI 構成比率(%)VYM 構成比率(%)備考
情報技術 (IT)29.010.0VTIの成長を牽引する中心セクター
金融13.020.0VYMで最も比率が高く、安定配当の源泉
ヘルスケア13.515.0景気変動に左右されにくいディフェンシブセクター
一般消費財10.08.0景気動向に敏感なセクター
資本財・サービス (産業)9.012.0景気循環セクターの一つ
通信サービス9.06.0ITと消費財の中間的な性質を持つ
生活必需品5.510.0VYMで高比率、不況期にも強いセクター
エネルギー4.04.0原油価格などに影響されやすい
公益事業3.05.0安定した収益と配当が特徴
素材3.03.0景気循環セクター
不動産1.04.0金利動向に左右されやすい

VTIとVYMの構成銘柄比較

VTIは米国の全市場を対象としているため、構成銘柄の上位には、時価総額の大きい、いわゆる巨大ハイテク企業が名を連ねます。一方、VYMの上位銘柄は、配当を安定して出し続けている成熟企業や、事業基盤が強固なディフェンシブな企業が中心です。

順位VTI 構成銘柄 (日本語名)VTI 比率 (%)VYM 構成銘柄 (日本語名)VYM 比率 (%)
1アップル6.5ジョンソン・エンド・ジョンソン3.5
2マイクロソフト6.0エクソン・モービル3.0
3アルファベット (Google) (クラスA)3.0JPモルガン・チェース3.0
4アマゾン・ドット・コム2.5プロクター・アンド・ギャンブル (P&G)2.8
5エヌビディア2.0ブロードコム2.5
6メタ・プラットフォームズ1.8ホーム・デポ2.2
7テスラ1.5コカ・コーラ2.0
8バークシャー・ハサウェイ (クラスB)1.2アボット・ラボラトリーズ1.8
9ユナイテッドヘルス・グループ1.0シスコシステムズ1.8
10エクソン・モービル0.9ペプシコ1.7
11ジョンソン・エンド・ジョンソン0.8ウェルズ・ファーゴ1.7
12JPモルガン・チェース0.7ファイザー1.6
13ビザ (クラスA)0.6メルク1.5
14ブロードコム0.6インテル1.4
15プロクター・アンド・ギャンブル (P&G)0.5ブロードリッジ・フィナンシャル・ソリューションズ1.3
16イーライ・リリー0.5ナイキ (クラスB)1.2
17マスターカード (クラスA)0.4ウォルト・ディズニー・カンパニー1.2
18シェブロン0.4アムジェン1.1
19コカ・コーラ0.4メドトロニック1.1
20アムジェン0.3コムキャスト (クラスA)1.0
21ホーム・デポ0.3ハネウェル・インターナショナル1.0
22アボット・ラボラトリーズ0.3ベライゾン・コミュニケーションズ0.9
23シスコシステムズ0.3レイセオン・テクノロジーズ0.9
24ペプシコ0.3デューク・エナジー0.8
25ウォルト・ディズニー・カンパニー0.2フィリップス660.8
26ブロードリッジ・フィナンシャル・ソリューションズ0.2PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ0.7
27メルク0.2UPS (クラスB)0.7
28ファイザー0.2ゴールドマン・サックス・グループ0.6
29インテル0.2ロッキード・マーティン0.6
30ベライゾン・コミュニケーションズ0.23Mカンパニー0.6

※比率は目安となる想定値であり、実際の比率は日々変動します。

VTIとVYMに投資した場合の成長率シミュレーション比較

初期投資100万円を50年間運用したシミュレーションを行いました。

VTIとVYMの過去の傾向に基づき、VTIを年率8%、VYMを年率6%(配当再投資込み)で想定し、また、両方を50万円ずつ均等に保有した場合のパターンも作成しました。

この結果を見ると、市場全体の成長を享受するVTIが、最終的な資産額で最も大きくなることが予想されます。一方、両方を購入するパターンは、VTIの成長力とVYMの安定性をバランスよく組み合わせる戦略となり、VTI単独よりもリターンは穏やかになりますが、リスク分散の効果も期待できます。

期間(年)VTI 単独(100万投資) 最終資産額(円)VYM 単独(100万投資) 最終資産額(円)VTI 50万 + VYM 50万 最終資産額(円)
51,469,0001,338,0001,404,000
102,159,0001,791,0001,975,000
153,172,0002,397,0002,785,000
204,661,0003,207,0003,934,000
256,848,0004,292,0005,557,000
3010,063,0005,743,0007,863,000
3514,785,0007,686,00011,118,000
4021,725,00010,286,00015,725,000
4531,939,00013,765,00022,233,000
5046,901,00018,420,00031,438,000

※VTI 年率8%、VYM 年率6%の想定リターン(配当再投資込み)で算出

VTIとVYMの配当比較

VTIとVYMはどちらも四半期に一度、つまり年4回の配当支払いを行っています。

具体的な支払月は、両者とも概ね「3月、6月、9月、12月」の年4回で共通しています。

支払月VTI 1口あたり配当金 (USD)VTI 1口あたり配当金 (円換算)VYM 1口あたり配当金 (USD)VYM 1口あたり配当金 (円換算)
3月0.850127.50.800120.0
4月
5月
6月0.950142.50.850127.5
7月
8月
9月0.900135.00.900135.0
10月
11月
12月1.100165.01.200180.0
1月
2月
合計 (年間)3.800570.03.750562.5

※直近1年の実績を基にした想定値(為替レートは1ドル150円で計算)

VTIとVYMに投資した場合の配当金シミュレーション比較

配当利回り約1.5%のVTIと、約3.0%のVYMでは、投資元本に対してどれくらいの配当金収入の差が生まれるのかをシミュレーションします。ここでは、仮に1000万円を投資した場合の年間配当金(税引き前)を日本円で比較してみました。

単純な「利回り」で見れば、高配当に特化したVYMがVTIを大きく上回るのは当然の結果です。

投資元本(円)VTI 年間想定配当利回り(%)VTI 年間想定配当金(円)VYM 年間想定配当利回り(%)VYM 年間想定配当金(円)
100万円1.515,0003.030,000
300万円1.545,0003.090,000
500万円1.575,0003.0150,000
1,000万円1.5150,0003.0300,000
3,000万円1.5450,0003.0900,000
5,000万円1.5750,0003.01,500,000

VTIとVYM、おすすめは?

結論から言えば、「合わせてもつ」のは非常に理にかなった戦略の一つです。

VTIの持つ高い成長性と、VYMの持つ安定した配当収入という、それぞれのメリットを享受できます。VTI単独は高いリターンを狙えますが、市場下落時のショックは大きくなりがちです。一方、VYM単独は安定していますが、成長期における爆発力に欠けます。

両方を組み合わせることで、リスクを抑えつつ、トータルリターンとインカムゲインのバランスを取ることが可能です。

観点VTI (市場全体型)VYM (高配当型)両方保有 (分散型)
最大のメリット米国市場の成長をほぼ完全に享受できる安定した高水準の配当収入が得られるリターンとインカムのバランスが取れる
最大のデメリット配当利回りが低いため、インカムは期待薄市場平均以上の成長は期待しにくいポートフォリオ管理がやや煩雑になる
トータルリターン高い (市場の成長力を最大限に活かす)中程度 (配当込みでVTIに劣後する傾向)中~高 (VTIとVYMの中間に位置)
インカムゲイン低い (配当再投資による長期的な複利を重視)高い (キャッシュフローを重視する投資家向き)中程度 (適度なキャッシュフローと成長を両立)
リスク耐性中程度 (市場全体と同じ変動を経験)やや高い (不況に強いディフェンシブ株が多い)中程度 (リスク分散効果で単独より安定)
投資初心者へのおすすめ度高い (迷ったらこれ、という王道ETF)中程度 (インカムの使い道を明確にできるなら)高い (両者のメリットを享受できるため)
投資目的資産の最大化、老後資金の形成定期的な収入、生活費の足し成長と安定のバランス、リスクヘッジ

FAQ(よくある質問)

Q
VTIとVYMはNISA(ニーサ)の対象ですか?
A

はい、どちらも日本の証券会社で購入可能であり、つみたてNISAの対象ではありませんが、成長投資枠(旧一般NISA)の対象銘柄として購入できます。ただし、利用する証券会社によっては取り扱いがない場合もあるため、事前に確認が必要です。非課税の恩恵を最大限に受けるためにも、NISA口座での利用を検討するのは賢明な選択です。

Q
VYMの配当利回りは今後も安定的に維持されますか?
A

VYMは高配当株で構成されていますが、個別の企業の業績が悪化すれば減配や無配になる可能性はあります。しかし、VYM自体が数百の銘柄に分散投資しているため、一部の減配があってもポートフォリオ全体としての配当金が大きく減るリスクは低いです。長期的に見れば、米国の経済成長と共に配当金総額は増加傾向にあると期待できます。

Q
VTIは景気が悪くなるとVYMよりも大きく下落しやすいですか?
A

統計的に見て、景気後退局面では、VTIのほうがVYMよりも下落率が大きくなる傾向があります。これは、VTIに多く含まれるハイテクや景気敏感株が、不況期に大きく売られやすいためです。一方、VYMはヘルスケアや生活必需品などのディフェンシブな高配当株の比率が高いため、相対的に株価の底堅さを見せることが多いです。

Q
20代の若手投資家と、50代のベテラン投資家ではどちらを選ぶべきですか?
A

一般論として、20代の方は長期の運用期間があるため、リターン最大化を目指せるVTIをコアにするのがおすすめです。50代の方は、退職後のインカムゲインを重視するフェーズに入り始めているため、安定した配当収入が得られるVYMの比率を高める戦略が考えられます。ただし、これはあくまで目安であり、個々のリスク許容度と目的によって最終的な判断は異なります。

Q
VTIとS&P500に連動するVOOはどちらを選ぶべきですか?
A

VTIは米国株式市場のほぼ全て(約4,000銘柄)に投資するのに対し、VOOはS&P500(約500銘柄)に投資します。歴史的に見て、VTIとVOOのリターンに大きな差はありませんが、VTIのほうが小型株までカバーしている分、より広範な分散が効いています。どちらを選んでも大きな問題はありませんが、超広範な分散を好むならVTI、米国の主要企業に絞りたいならVOOという選び方ができます。

まとめ

VTIとVYMは、どちらも優れたETFであり、米国株投資のポートフォリオにおいて重要な役割を果たすことができます。VTIは、米国市場全体の成長を享受し、長期的な資産の最大化を目指す投資家にとっての「王道」です。一方、VYMは、安定した配当収入(インカムゲイン)を重視し、キャッシュフローを得たい投資家にとって非常に魅力的な選択肢となります。

どちらか一方を選ぶのではなく、両方を組み合わせて持つという戦略は、VTIの持つ成長力とVYMの持つ安定性の「いいとこどり」ができるため、多くの投資家にとって最適なバランスを生み出します

投資の目的やライフステージに応じて、この2つのETFの比率を調整していくことが、米国株投資で成功するための鍵となるでしょう。

執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。

タイトルとURLをコピーしました