【米国株】セクターローテーションとは?各フェーズにおいてのおすすめの投資先業種やETFはどこか

セクターローテーション 投資

この記事のポイント

セクターローテーションは景気のサイクルを意識しながら、状況に合わせて投資対象となる業種を定期的に切り替える投資戦略のこと

景気のサイクルは全4フェーズあり、そのサイクルに応じて株式市場における相場が変わる

株式市場における相場も全4フェーズあり、それぞれにおいて株価が上昇する業種がある

業種ごとに対応するETFが存在するため、セクターローテーションを行いたい場合は活用をおすすめする

セクターローテーションとは

セクターローテーションとは、景気や金利の状況に合わせて投資対象となる業種(セクター)を定期的に切り替える投資戦略のことです。

S&P500指数に投資をするような場合は、全セクターが入っているので気にする必要はないのですが、個別株やセクターを限定しているようなETFに投資しているような場合は知っておいたほうがいい概念だと思います。

景気のサイクル

景気というものには必ず波があり、ずっと上がり続ける、ずっと下がり続けるということはまずありません。波線形での推移をたどっていくものです。この推移を景気サイクルと呼びます。

主に4つのフェーズがあり、その4フェーズを繰り返しながら経済は成長していきます。

  1. 好景気:景気が拡大し、経済全体が活発化する時期。雇用が拡大し、賃金も上昇。企業は積極的に投資を実施し、結果として株価も上昇傾向に。
  2. 後退期:景気拡大が止まり、経済が後退し始める時期。消費者心理が悪化し、企業業績も悪化。雇用が縮小し、賃金も停滞または下降。結果として株価も下落傾向に。
  3. 不景気:景気後退が深刻化し、経済全体が低迷する時期。失業率が上昇し、企業倒産も増加。株価は大きく下落。
  4. 回復期:景気が底を打ち、緩やかに回復し始める時期。消費者心理が改善し、企業業績も徐々に回復に向う。

景気サイクルの平均的な期間は、短くても約10年と言われおり、長ければ20年以上続くこともあります。以下のような要因が複雑に絡み合うことによってサイクルが長引くのか短くなるのかが決まります。

  • 金融政策:中央銀行による金利の引き上げ・引き下げなど
  • 財政政策:政府による財政出動など
  • 技術革新:新技術の出現による経済変動など
  • 国際情勢:政治的な混乱や戦争など

投資家たちがFRBの動向や、生成AIなどの技術進歩の動向を注意深く観察するのもそのためです。

相場の循環

景気のサイクルに連動するように、株価にもサイクルが存在します。株式市場は、景気サイクルを予想して3~6ヵ月早く動く傾向にあり、こちらも4つのフェーズが存在します。

業績相場

業績相場とは、企業業績の好調化を背景に、株価が全体的に上昇する相場のことを指します。好景気フェーズにおいて、多くの企業が業績を向上させ、幅広い銘柄の株価が上昇する傾向があります。

対応する景気フェーズは、「好景気」フェーズです。

業績相場の主な特徴

  • 業績向上を背景とした株価上昇:多くの企業が業績を向上させることで、投資家心理が改善し、幅広い銘柄の株価が上昇傾向に。
  • 業種間の格差拡大:業績格差に応じて、業種間で株価パフォーマンスに差が生じます。業績の良い業種は大きく上昇する一方、業績の悪い業種は上昇率が低かったり、下落したりする可能性がある。
  • 個別銘柄の分析が重要:業績相場においては、個別銘柄の業績分析がより重要に。業績の良い銘柄を選定することで、より高いリターンを得られる可能性がある。

逆金融相場

逆金融相場とは、景気後退懸念や金利上昇(金融引き締め)などの影響で、株価が全体的に下落する相場のことを指します。下がり局面なので、投資家にとって厳しい局面と言え、握力が試されるときでもあります。

対応する景気フェーズは、「後退期」フェーズです。

逆金融相場の主な特徴

  • グロース株の売却:景気後退懸念が高まると、投資家は将来の成長が見込めるグロース株よりも、安定志向のディフェンシブ株を好む傾向がある。そのため、グロース株の株価が大きく下落する可能性がある。
  • 業績悪化企業の株価下落:業績が悪化する企業の株価は、当然ながら大きく下落する。
  • 市場全体のボラティリティ上昇:投資家心理が悪化すると、市場全体のボラティリティが上昇し、値動きが荒くなる。

逆業績相場

逆業績相場とは、相場に遅れて企業業績が悪化し、株価が全体的に下落する相場のことを指します。逆金融相場と同じく、投資家にとって厳しい局面と言えます。

対応する景気フェーズは、「不景気」フェーズです。

逆業績相場の特徴は、逆金融相場の特徴と同じく、業績悪化企業の株価下落や市場全体のボラティリティが上昇するなどがあります。

金融相場

金融相場とは、金融緩和の影響で、業績を伴わずに株価が上がり始める相場のことを指します。投資家にとってはチャンスとなる局面です。

対応する景気フェーズは、「回復期」フェーズです。

金融相場の主な特徴

  • 業績に伴わない株価上昇:金利、為替などの要因が重視され、企業業績が回復するという期待が先行して株価が上昇。いわゆる「期待買い」が多く行われます。
  • 公共投資に関連する業界がリード:買われるセクターは、金融や不動産など金利低下メリットを享受する企業です。

それぞれの相場におけるおすすめの投資先(業種)は?

業績相場:資本財株、素材株、一般消費財株

資本財株

  • キャタピラー(CAT): 建設機械大手。世界経済の成長とインフラ投資拡大の恩恵を受けやすい。
  • ハネウェル・インターナショナル(HON): 航空機部品や自動車部品などを製造する大手企業。世界経済の成長と航空機・自動車市場の回復による恩恵が期待される。
  • 3M(MMM): 多角化企業。ヘルスケア、工業、エネルギーなどの幅広い分野で事業を展開している。景気回復による恩恵が期待される。

素材株

  • エクソン・モービル(XOM): 石油・ガス大手。石油価格上昇による恩恵が期待される。
  • シェブロン(CVX): 石油・ガス大手。エクソン・モービルと同様に、石油価格上昇による恩恵が期待される。
  • フリーポート・マクモラン(FCX): 銅鉱山大手。銅価格上昇による恩恵が期待される。

一般消費財株

  • コカ・コーラ(KO): 炭酸飲料大手。世界的なブランド力と安定収益が魅力。
  • プロクター・アンド・ギャンブル(PG): 日用品大手。生活必需品であるため、景気変動の影響を受けにくい。
  • マクドナルド(MCD): ファーストフード大手。世界的なブランド力と海外事業の成長が期待される。

逆金融相場:エネルギー株

エネルギー株

  • エクソン・モービル(XOM): 石油・ガス大手。石油価格上昇による恩恵が期待される。
  • シェブロン(CVX): 石油・ガス大手。エクソン・モービルと同様に、石油価格上昇による恩恵が期待される。
  • コナコフィリップス(COP): 石油・ガス大手。エクソン・モービル、シェブロンと同様に、石油価格上昇による恩恵が期待される。

逆業績相場:通信サービス株、ヘルスケア株、生活必需品株、公益事業株

通信サービス株

  • ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ): 移動体通信大手。通信料金値下げ競争が懸念される一方、5G通信サービスの普及による成長が期待されている。
  • AT&T(T): 移動体通信大手。ベライゾン・コミュニケーションズと同様に、通信料金値下げ競争が懸念される一方、5G通信サービスの普及による成長が期待されている。
  • TモバイルUS(TMUS): 移動体通信大手。ベライゾン・コミュニケーションズ、AT&Tと同様に、通信料金値下げ競争が懸念される一方、5G通信サービスの普及による成長が期待されている。

ヘルスケア株

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ): 医薬品・医療機器大手。新薬開発への投資拡大が注目されている。
  • ファイザー(PFE): 医薬品大手。ジョンソン・エンド・ジョンソンと同様に、新薬開発への投資拡大が注目されている。
  • アボット・ラボラトリーズ(ABT): 医薬品・医療機器大手。ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザーと同様に、新薬開発への投資拡大が注目されている。

生活必需品株

  • プロクター・アンド・ギャンブル(PG): 日用品大手。生活必需品であるため、景気変動の影響を受けにくい。
  • コカ・コーラ(KO): 炭酸飲料大手。世界的なブランド力と安定収益が魅力。
  • ケロッグ(K): シリアル大手。生活必需品であるため、景気変動の影響を受けにくい。

公益事業株

  • デューク・エナジー(DUK): 電力・ガス大手。安定収益とインフラ投資拡大による恩恵が期待される。
  • サザン・カンパニー(SO): 電力・ガス大手。デューク・エナジーと同様に、安定収益とインフラ投資拡大による恩恵が期待される。
  • アメリカン・エレクトリック・パワー(AEP): 電力・ガス大手。デューク・エナジー、サザン・カンパニーと同様に、安定収益とインフラ投資拡大による恩恵が期待される。

金融相場:情報技術株、金融株

情報技術株

  • アップル(AAPL): スマートフォン、タブレット、パソコンなどのIT機器を製造・販売する大手企業。世界的なブランド力と高い収益性を誇り、金融相場における代表的な銘柄の一つ。
  • マイクロソフト(MSFT): Windows OSやOfficeソフトなどのソフトウェアを開発・販売する大手企業。クラウド事業の成長も期待されており、金融相場における安定銘柄の一つ。
  • アルファベット(GOOGL): Google検索やYouTubeなどのインターネットサービスを運営する大手企業。デジタル広告市場における圧倒的なシェアを誇り、金融相場における成長銘柄の一つ。
  • アマゾン(AMZN): オンラインショッピングモールを運営する世界最大級のEC企業。クラウド事業や物流事業も成長しており、金融相場における注目銘柄の一つ。
  • テスラ(TSLA): 電気自動車(EV)を製造・販売する新興企業。EV市場の成長とともに株価が急上昇しており、金融相場におけるハイリスク・ハイリターン銘柄の一つ。

金融株

  • バンク・オブ・アメリカ(BAC): 米国最大級の銀行。金利上昇による恩恵が期待されており、金融相場における代表的な銘柄の一つ。
  • JPMorgan Chase(JPM): 米国最大級の銀行。バンク・オブ・アメリカと同様に、金利上昇による恩恵が期待されており、金融相場における安定銘柄の一つ。
  • シティグループ(C): 米国大手銀行。国際展開が強みであり、金融相場におけるグローバル銘柄の一つ。
  • ウェルズ・ファーゴ(WFC): 米国大手銀行。住宅ローン事業に強みがあり、金融相場における景気敏感銘柄の一つ。
  • ゴールドマン・サックス(GS): 米国大手投資銀行。M&Aや証券業務に強みがあり、金融相場における成長銘柄の一つ。

各セクターに投資できるおすすめのETF

資本財株

  • iShares U.S. Industrials ETF (XLI): 米国主要な資本財企業に投資するETF。キャタピラー、ハネウェル・インターナショナル、3Mなどの銘柄が含まれています。
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  • Vanguard Industrials ETF (VIS): 米国主要な資本財企業に投資するETF。XLIと同様に、キャタピラー、ハネウェル・インターナショナル、3Mなどの銘柄が含まれています。
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素材株

  • SPDR S&P Metals & Mining ETF (XME): 米国主要な鉱業・金属企業に投資するETF。エクソン・モービル、シェブロン、フリーポート・マクモランなどの銘柄が含まれています。
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  • iShares U.S. Basic Materials ETF (XLB): 米国主要な素材企業に投資するETF。XMEと同様に、エクソン・モービル、シェブロン、フリーポート・マクモランなどの銘柄が含まれています。
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一般消費財株

  • Consumer Staples Select Sector SPDR Fund (X staples): 米国主要な一般消費財企業に投資するETF。コカ・コーラ、プロクター・アンド・ギャンブル、マクドナルドなどの銘柄が含まれています。
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  • Vanguard Consumer Staples ETF (VDC): 米国主要な一般消費財企業に投資するETF。X staplesと同様に、コカ・コーラ、プロクター・アンド・ギャンブル、マクドナルドなどの銘柄が含まれています。
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エネルギー株

  • Energy Select Sector SPDR Fund (XLE): 米国主要なエネルギー企業に投資するETF。エクソン・モービル、シェブロン、コナコフィリップスなどの銘柄が含まれています。
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  • Vanguard Energy ETF (VDE): 米国主要なエネルギー企業に投資するETF。XLEと同様に、エクソン・モービル、シェブロン、コナコフィリップスなどの銘柄が含まれています。
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通信サービス株

  • iShares U.S. Telecommunications ETF (ITUS): 米国主要な通信サービス企業に投資するETF。ベライゾン・コミュニケーションズ、AT&T、TモバイルUSなどの銘柄が含まれています。
  • Vanguard Telecommunication Services ETF (VOX): 米国主要な通信サービス企業に投資するETF。ITUSと同様に、ベライゾン・コミュニケーションズ、AT&T、TモバイルUSなどの銘柄が含まれています。
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ヘルスケア株

  • Health Care Select Sector SPDR Fund (XLV): 米国主要なヘルスケア企業に投資するETF。ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー、アボット・ラボラトリーズなどの銘柄が含まれています。
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  • Vanguard Healthcare ETF (VHT): 米国主要なヘルスケア企業に投資するETF。XLVと同様に、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー、アボット・ラボラトリーズなどの銘柄が含まれています。
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生活必需品株

  • Consumer Staples Select Sector SPDR Fund (X staples): 米国主要な一般消費財企業に投資するETF。コカ・コーラ、プロクター・アンド・ギャンブル、ケロッグなどの銘柄が含まれています。
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  • Vanguard Consumer Staples ETF (VDC): 米国主要な一般消費財企業に投資するETF。X staplesと同様に、コカ・コーラ、プロクター・アンド・ギャンブルなどの銘柄が含まれています。
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公益事業株

  • Utilities Select Sector SPDR Fund (XLU): 米国主要な公益事業企業に投資するETF。デューク・エナジー、サザン・カンパニー、アメリカン・エレクトリック・パワーなどの銘柄が含まれています。
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  • Vanguard Utilities ETF (VPU): 米国主要な公益事業企業に投資するETF。XLUと同様に、デューク・エナジー、サザン・カンパニー、アメリカン・エレクトリック・パワーなどの銘柄が含まれています。
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情報技術株

  • Technology Select Sector SPDR Fund (XLK): 米国主要な情報技術企業に投資するETF。アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、テスラなどの銘柄が含まれています。
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  • Vanguard Information Technology ETF (VGT): 米国主要な情報技術企業に投資するETF。XLKと同様に、アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、テスラなどの銘柄が含まれています。
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金融株

  • Financial Select Sector SPDR Fund (XLF): 米国主要な金融機関に投資するETF。バンク・オブ・アメリカ、JPMorgan Chase、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスなどの銘柄が含まれています。
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  • Vanguard Financials ETF (VFH): 米国主要な金融機関に投資するETF。XLFと同様に、バンク・オブ・アメリカ、JPMorgan Chase、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックスなどの銘柄が含まれています。
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まとめ

景気のサイクルを意識しながら、状況に合わせて投資対象となる業種を定期的に切り替える投資戦略であるセクターローテーションという概念は覚えておくに越したことはないと思います。S&P500指標に連動するETFなどの投資に少し飽きてしまい、もう少しリスクをとって業種や個別銘柄に投資したいという方にはおすすめの戦略になります。

執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。いろんな国や商品に投資。投資歴はまあまあ長め。基軸はインデックス投資での運用。短期売買はあまりせず、長期目線での投資をコツコツと。