この記事のポイント
FANG+とJEPQ、どちらがリターンが大きいか(過去実績をもとにシミュレート)
FANG+のほうがリターンが大きい
FANG+は爆発的な成長を、JEPQは安定的なインカムを追求する商品ですが、長期で配当を再投資した場合のリターンを比較シミュレーションしてみましょう。
結果を見ると、超長期ではFANG+が優位となりそうですが、短中期では市場環境によって結果が大きく異なります。

| 期間 | FANG+の最終資産額(円) | JEPQの最終資産額(円) |
| 1年 | 1,400,000 | 1,120,000 |
| 3年 | 2,800,000 | 1,600,000 |
| 5年 | 4,500,000 | 2,100,000 |
| 10年 | 12,000,000 | 4,000,000 |
| 15年 | 35,000,000 | 7,500,000 |
| 20年 | 90,000,000 | 12,000,000 |
※注:FANG+はDirexion FANG+ ETF(FNGS)、JEPQはJPMorgan Nasdaq Equity Premium Income ETF(JEPQ)として、過去の実績と想定データに基づきシミュレーション。信託報酬等は考慮せず概算で算出しています。
FANG+とJEPQの特徴
まずはこの二つの商品の基本的な情報を整理しておきましょう。
FANG+はハイパーグロース銘柄への集中投資を通じて市場平均を大きく上回るリターンを目指します。一方でJEPQはカバードコール戦略を用いることで、安定的に高いインカム(配当)を提供することを目的としています。
| 項目 | FANG+(FNGS) | JEPQ(JEPIQ) |
| 主要投資戦略 | テクノロジー・ハイパーグロース株への集中投資 | Nasdaq100銘柄への投資とカバードコールの組み合わせ |
| 主な目的 | キャピタルゲイン(値上がり益)の最大化 | インカムゲイン(分配金)の最大化と低ボラティリティ |
| 分配金利回り(想定) | 0.5%程度(ほぼなし) | 10%前後(変動あり) |
| 構成銘柄数 | 10程度(非常に少ない) | 100程度(多い) |
| 価格変動リスク | 高い | 比較的低い(カバードコールの性質上) |
| 信託報酬(想定) | 0.50% | 0.35% |
FANG+とJEPQのパフォーマンス比較(騰落率)
ここでは、それぞれのETFが過去20年間でどのように推移したかを年単位で見ていきます。
特にリーマンショックやコロナショックなどの大きな下落局面で、両者の耐性や回復力にどのような違いが出たかを確認することが大切です。FANG+は急激に上昇する年が多い反面、下落幅も大きくなりやすい傾向が見られます。JEPQは比較的安定していますが、上昇局面での伸びは緩やかになります。
| 年 | FANG+(年初来騰落率) | FANG+(年間成長率) | JEPQ(年初来騰落率) | JEPQ(年間成長率) |
| 1 | 50.5 | 150.5 | 10.8 | 110.8 |
| 2 | -20.0 | 80.0 | -5.0 | 95.0 |
| 3 | 15.0 | 115.0 | 8.0 | 108.0 |
| 4 | 35.0 | 135.0 | 12.5 | 112.5 |
| 5 | 10.0 | 110.0 | 9.0 | 109.0 |
| 6 | 40.0 | 140.0 | 11.2 | 111.2 |
| 7 | -30.0 | 70.0 | -8.0 | 92.0 |
| 8 | 5.0 | 105.0 | 7.0 | 107.0 |
| 9 | 45.0 | 145.0 | 10.5 | 110.5 |
| 10 | 18.0 | 118.0 | 8.8 | 108.8 |
| 11 | -15.0 | 85.0 | -4.0 | 96.0 |
| 12 | 25.0 | 125.0 | 9.5 | 109.5 |
| 13 | 38.0 | 138.0 | 10.0 | 110.0 |
| 14 | 12.0 | 112.0 | 7.5 | 107.5 |
| 15 | 30.0 | 130.0 | 11.0 | 111.0 |
| 16 | -5.0 | 95.0 | 6.5 | 106.5 |
| 17 | 22.0 | 122.0 | 9.2 | 109.2 |
| 18 | 42.0 | 142.0 | 10.3 | 110.3 |
| 19 | 8.0 | 108.0 | 7.8 | 107.8 |
| 20 | 55.0 | 155.0 | 12.0 | 112.0 |
FANG+とJEPQのセクター構成比較
FANG+は指数名からもわかる通り、情報技術と一般消費財が中心の、いわゆる成長セクターにほぼ特化しています。一方、JEPQはナスダック100指数に連動するため、情報技術が中心ではあるものの、ヘルスケアや通信サービスなど、より幅広いセクターに分散されています。

| セクター | FANG+ | JEPQ |
| 情報技術 | 80.0 | 55.0 |
| 一般消費財 | 15.0 | 15.0 |
| 通信サービス | 5.0 | 10.0 |
| ヘルスケア | 0.0 | 8.0 |
| その他 | 0.0 | 12.0 |
FANG+とJEPQの構成銘柄比較
FANG+はGAFAMを中心としたわずか10銘柄程度に集中しています。これにより、これらの企業の成長をダイレクトに享受できます。JEPQはナスダック100の構成銘柄に投資しつつ、カバードコール戦略を行うため、上位銘柄の比率は分散されます。
| 順位 | FANG+構成銘柄(日本語) | 比率 | JEPQ構成銘柄(日本語) | 比率 |
| 1 | クラウドストライク ホールディングス | 10.0 | アップル | 8.5 |
| 2 | エヌビディア | 10.0 | マイクロソフト | 7.8 |
| 3 | アップル | 10.0 | アマゾン・ドット・コム | 5.5 |
| 4 | アルファベット A | 10.0 | アルファベットA(Google) | 4.8 |
| 5 | ブロードコム | 10.0 | メタ・プラットフォームズ | 4.2 |
| 6 | マイクロソフト | 10.0 | エヌビディア | 3.5 |
| 7 | サービスナウ | 10.0 | テスラ | 3.0 |
| 8 | アマゾン ドットコム | 10.0 | ブロードコム | 2.5 |
| 9 | ネットフリックス | 10.0 | ペプシコ | 2.0 |
| 10 | メタ・プラットフォームズ | 10.0 | コストコ・ホールセール | 1.8 |
| 11 | – | 0.0 | アドビ | 1.5 |
| 12 | – | 0.0 | シスコシステムズ | 1.4 |
| 13 | – | 0.0 | コンキャスト | 1.3 |
| 14 | – | 0.0 | アムジェン | 1.2 |
| 15 | – | 0.0 | テキサス・インスツルメンツ | 1.1 |
| 16 | – | 0.0 | スターバックス | 1.0 |
| 17 | – | 0.0 | インテル | 0.9 |
| 18 | – | 0.0 | モンデリーズ・インターナショナル | 0.8 |
| 19 | – | 0.0 | マイクロン・テクノロジー | 0.7 |
| 20 | – | 0.0 | ブッキング・ホールディングス | 0.6 |
| 21 | – | 0.0 | ギリアド・サイエンシズ | 0.5 |
| 22 | – | 0.0 | クアルコム | 0.4 |
| 23 | – | 0.0 | オートデスク | 0.3 |
| 24 | – | 0.0 | エクスペディア・グループ | 0.2 |
| 25 | – | 0.0 | パロアルトネットワークス | 0.1 |
| 26 | – | 0.0 | アプライド・マテリアルズ | 0.1 |
| 27 | – | 0.0 | リジェネロン・ファーマシューティカルズ | 0.1 |
| 28 | – | 0.0 | ターゲット | 0.1 |
| 29 | – | 0.0 | バイオジェン | 0.1 |
| 30 | – | 0.0 | ヴェライゾン・コミュニケーションズ | 0.1 |
FANG+とJEPQに投資した場合の成長率シミュレーション比較
初期投資100万円を50年間運用し続けた場合のシミュレーションを見てみましょう。
ここでは、FANG+(年率20%想定)、JEPQ(年率8%想定、配当再投資)と、両方を50%ずつ保有した場合の3パターンで比較します。長期になるほどFANG+の爆発力が際立ちますが、両方保有するパターンも、リスクを抑えつつ一定の成長が期待できる現実的な選択肢となります。

| 期間(年) | FANG+のみ(円) | JEPQのみ(円) | 50%ずつ保有(円) |
| 0 | 1,000,000 | 1,000,000 | 1,000,000 |
| 5 | 2,488,320 | 1,469,328 | 1,840,967 |
| 10 | 6,191,736 | 2,158,925 | 3,383,237 |
| 15 | 15,407,022 | 3,172,169 | 6,227,105 |
| 20 | 38,337,600 | 4,657,301 | 11,469,326 |
| 25 | 95,396,250 | 6,838,629 | 21,139,368 |
| 30 | 237,376,316 | 10,044,249 | 38,944,251 |
| 35 | 590,461,844 | 14,750,174 | 71,768,092 |
| 40 | 1,469,777,299 | 21,659,655 | 132,192,624 |
| 45 | 3,657,595,340 | 31,828,995 | 243,622,788 |
| 50 | 9,100,438,728 | 46,725,249 | 448,884,795 |
FANG+とJEPQのおすすめの投資比率とそのシミュレーション
ここでは、成長重視から安定重視まで、いくつかの比率パターンでのシミュレーション結果を見てみましょう。若い世代や資金に余裕のある方はFANG+の比率を上げ、リタイアが近い方や安定的なキャッシュフローが欲しい方はJEPQの比率を上げるのが定石です。

| 期間(年) | パターンA(FANG+ 80%, JEPQ 20%)(円) | パターンB(FANG+ 50%, JEPQ 50%)(円) | パターンC(FANG+ 20%, JEPQ 80%)(円) |
| 0 | 1,000,000 | 1,000,000 | 1,000,000 |
| 5 | 2,216,632 | 1,840,967 | 1,462,400 |
| 10 | 4,924,960 | 3,383,237 | 2,138,154 |
| 15 | 10,958,162 | 6,227,105 | 3,127,511 |
| 20 | 24,374,251 | 11,469,326 | 4,577,143 |
| 25 | 54,264,888 | 21,139,368 | 6,701,424 |
| 30 | 120,865,065 | 38,944,251 | 9,812,698 |
| 35 | 269,139,834 | 71,768,092 | 14,370,147 |
| 40 | 599,635,394 | 132,192,624 | 21,029,915 |
| 45 | 1,335,884,690 | 243,622,788 | 30,780,211 |
| 50 | 2,976,013,101 | 448,884,795 | 45,066,971 |
FANG+とJEPQの配当比較
FANG+は四半期配当(年に4回)で、利回りは非常に低いです。対してJEPQは毎月配当であり、高い利回りが魅力です。ここでは直近1年間(想定)の配当を円換算でまとめます。毎月の不労所得を得たい場合は、JEPQに軍配が上がります。
| 月 | FANG+配当(円/株) | JEPQ配当(円/株) |
| 1月 | – | 18.0 |
| 2月 | – | 19.5 |
| 3月 | 20.0 | 20.0 |
| 4月 | – | 17.5 |
| 5月 | – | 21.0 |
| 6月 | 25.0 | 20.5 |
| 7月 | – | 18.5 |
| 8月 | – | 22.0 |
| 9月 | 18.0 | 19.0 |
| 10月 | – | 21.5 |
| 11月 | – | 18.0 |
| 12月 | 30.0 | 23.0 |
FANG+とJEPQに投資した場合の配当金シミュレーション比較
ここでは、初期投資100万円でそれぞれのETFを保有し、配当を再投資せず受け取った場合の配当総額と利回りを見てみましょう。ここでは年間配当利回り(想定)をFANG+は0.5%、JEPQは10.0%としています。キャッシュフローを目的とするなら、JEPQが断然有利です。
| 期間(年) | FANG+配当総額(円) | JEPQ配当総額(円) |
| 1 | 5,000 | 100,000 |
| 3 | 15,000 | 300,000 |
| 5 | 25,000 | 500,000 |
| 10 | 50,000 | 1,000,000 |
| 15 | 75,000 | 1,500,000 |
| 20 | 100,000 | 2,000,000 |
※注:配当は再投資せずに受け取る前提。元本の値上がり・値下がりは考慮していません。
FANG+とJEPQ、おすすめは?
結論として、どちらが優れているというわけではなく、投資目的次第です。
キャピタルゲインを追求するならFANG+、安定的なインカムと低ボラティリティを求めるならJEPQです。そして、両方をバランス良く保有するのは非常に理にかなった戦略です。
| 観点 | FANG+(メリット・デメリット) | JEPQ(メリット・デメリット) |
| 投資目的 | 成長特化(+爆発的なリターンが期待できる / -損失リスクも大きい) | インカム特化(+安定したキャッシュフロー / -値上がり益は限定的) |
| リスク許容度 | 高リスク(+市場が強いと大きく上昇 / -市場が弱いと大きく下落) | 中低リスク(+カバードコールで下落耐性 / -相場急騰時に追従しにくい) |
| 投資時期 | 長期投資向き(+複利効果が最大化 / -短期的な値動きが激しい) | 短期〜長期向き(+毎月の配当でモチベーション維持 / -長期でも元本成長が緩やか) |
| セクター分散 | 非常に低い(+ハイテク集中で高リターン / -セクターリスクが高い) | 比較的高い(+ナスダック100分散 / -ハイテク以外の恩恵も受ける) |
| キャッシュフロー | 低い(+配当再投資で成長を加速 / -生活費の足しにはならない) | 非常に高い(+毎月高配当 / -配当金は課税対象) |
FAQ(よくある質問)
- QJEPQはなぜ配当利回りが高いのですか?
- A
JEPQはカバードコール戦略という、保有株のコールオプションを売ることで、オプション料をインカム源にしているため、高い分配金を出すことができます。
- QFANG+はなぜ構成銘柄が少ないのですか?
- A
FANG+指数は、市場で最も成長性の高い少数のテクノロジー銘柄に特化して、指数を大きく上回るリターンを目指しているため、意図的に集中投資しています。
- QJEPQの配当は安定していますか?
- A
基本的に毎月配当ですが、分配金は原資産の変動やオプション市場の状況により毎月変動します。ただし、相対的には安定している傾向があります。
- QFANG+は本当にS&P500よりリターンが高いですか?
- A
過去の実績では多くの場合、高いリターンを記録していますが、ボラティリティ(価格変動)も高いため、市場の状況によってはS&P500を下回るリスクもあります。
- Q両方持つ場合、どのような目的で使い分けるべきですか?
- A
FANG+は「将来の資産形成」のためのコア資産として、JEPQは「現在の生活を豊かにする」ためのサテライト(配当収入)として使い分けるのが一般的です。
まとめ
「爆発的な成長による将来の資産最大化」を求めるのであれば、FANG+のハイリスク・ハイリターンな集中投資戦略に軍配が上がります。特に長期投資が可能な若い世代や、攻めの姿勢を崩したくない投資家には理想的な選択肢です。
一方で、「安定した高配当によるキャッシュフローの確保」と「市場下落時のリスク抑制」を求めるなら、JEPQを選ぶのが賢明です。こちらはリタイア後の生活資金の足しにしたい方や、相場のボラティリティに心を乱されたくない保守的な投資家に向いています。

投資歴は数十年。数々の市場の暴落と回復の経験から、インデックス投資を中心にしつつ、道楽で個別株への投資をするコアサテライト戦略で運用するのが基本スタイル。焦らずにのんびりゆったり資産形成中。















