米国株投資と金利差の関係とは?

米国株と金利 ETF

米国株投資における金利差の重要性

日本の投資家にとって、米国株への投資は大変人気です。

特に、米国市場を代表するS&P500指数やテクノロジー企業が中心のナスダック100指数に連動するETF(上場投資信託)に関心が集まっています。米国株投資の魅力は、成長性が高く、長期的に安定したリターンが期待できる点にあります。

しかし、外国株への投資には日本円から米ドルに資産を変える必要があるため、「為替リスク」と「金利差の影響」を無視することはできません

特に、米国金利と日本の金利差が広がると、為替レートに大きな影響を及ぼすことがあります。

これにより、米国株に連動するETFのパフォーマンスが変動し、日本円で見たリターンに差が生じる場合があるのです。

本記事では、米国と日本の金利差が為替レートに与える影響を考慮し、S&P500やナスダック100への投資リターンがどのように変わるかを検証していきます。

金利差と為替の関係性:為替リスクとは?

まず、米国と日本の金利差が為替に与える影響について解説します。

基本的に、米国の金利が高く、日本の金利が低い場合、ドルへの需要が高まり、円安ドル高が進む傾向があります。これを為替の「金利差効果」と呼びます。

たとえば、米国が利上げを行い、金利が上昇すると、海外からの投資家はドルを買って米国債や他のドル建て資産に投資しようとするため、ドル高が進行します。逆に、日本が利上げを行ったり、米国が利下げを行うと、金利差が縮小して円高ドル安の圧力がかかることになります。

このように、金利差が為替に与える影響を理解することは、米国株投資において非常に重要です。米国株に投資して利益を上げた場合でも、為替が円高に進むとドル建ての利益が減少し、円換算ではリターンが低下する可能性があるのです。

S&P500連動ETFとナスダック100連動ETFのドル円換算影響

S&P500やナスダック100の指数に連動するETF(例えば、S&P500連動のVOOやナスダック100連動のQQQ)は、米国の株式市場を代表するETFで、多くの投資家が利用しています。これらのETFに投資する場合、為替リスクも考慮する必要があります。ドル円レートの変動がどのように投資リターンに影響するかの例をいくつか見ていきましょう。

例:S&P500 ETF (VOO) に1,000ドル投資した場合

仮に、ドル円が130円のときにVOOに1,000ドル投資したとしましょう。

この場合、投資金額は130,000円です。その後、1年後にVOOの価格が10%上昇して1,100ドルになったとします。

  • 円安が進んだ場合(140円)
    1,100ドル × 140円 = 154,000円
    → 円建てリターンは、154,000円 – 130,000円 = 24,000円 (18.5%)
  • 円高が進んだ場合(120円)
    1,100ドル × 120円 = 132,000円
    → 円建てリターンは、132,000円 – 130,000円 = 2,000円 (1.5%)

この例から分かるように、米国株ETFの価格が10%上昇しても、為替変動によって円建てでのリターンは大きく変動します。このような為替リスクを理解し、投資時期や為替の動向を考慮することが大切です。

ドル円換算のリスクとヘッジの考え方

米国株ETF投資においては、為替リスクを回避する方法として「為替ヘッジ」を利用することも考えられます。為替ヘッジ付きのETFや、為替取引を活用することで、ドル円換算の影響を軽減することが可能です。

為替ヘッジのメリットとデメリット

  • メリット
    為替レートの変動による影響を避け、純粋に株価の変動だけをリターンに反映できます。特に、ドル高が続くと予想される場合や、円建てリターンを安定させたい場合には有効です。
  • デメリット
    ヘッジにはコストがかかり、年に1〜2%程度の追加費用が必要です。また、為替ヘッジを行っても金利差の影響が全くゼロになるわけではないため、投資計画に合わせた選択が重要です。

シミュレーション:金利差と為替リスクによるリターンへの影響

米国株式投資において、為替リスクがリターンに与える影響を実際の数値を用いてシミュレーションしてみましょう。ここでは、米国金利が高い局面での米国株投資を例に、円高・円安の変動による円換算リターンの違いを検証します。

シナリオ:S&P500に1年間投資した場合

ここでは、ドル円レートが130円のときに100万円をS&P500 ETFに投資した場合を考えます。このとき、S&P500の年間リターンは10%と仮定します。また、投資後1年でドル円レートが円安(135円)もしくは円高(125円)に動くケースを比較してみましょう。

  1. 投資開始時の条件
    • ドル円レート:130円
    • 投資金額:100万円
    • 投資額のドル換算:100万円 ÷ 130円 = 約7,692ドル
  2. 1年後のS&P500 ETFの価格変動
    • 年間リターン:10%
    • 1年後のドル建て資産:7,692ドル × 1.10 = 約8,461ドル
  3. 円換算リターンの変動
    • ケース1:円安(ドル円135円の場合)
      円建て評価額:8,461ドル × 135円 = 1,142,235円
      円建てリターン:1,142,235円 – 1,000,000円 = 142,235円 (14.2%)
    • ケース2:円高(ドル円125円の場合)
      円建て評価額:8,461ドル × 125円 = 1,057,625円
      円建てリターン:1,057,625円 – 1,000,000円 = 57,625円 (5.7%)

このように、為替の変動により、米国株で得られるリターンが日本円での換算額に対して大きな影響を与えることが分かります。特に、円高になるとリターンが圧縮されるため、為替の動向を踏まえた投資判断が重要です。

金利差を理解した米国株投資のすすめ

米国株投資には、金利差と為替リスクが重要な要素として絡んできます。特に、S&P500やナスダック100といった米国の主要株価指数に連動するETFは、安定したリターンを狙える投資手段であるものの、日本円でリターンを得る場合には為替の影響が大きく関わります。

金利差が広がり円安ドル高が進む局面では、ドル建てのリターンが円建てリターンに対して好影響をもたらす場合がありますが、逆に円高になればリターンは圧縮されるリスクもあります。したがって、米国株投資においては金利差と為替リスクを理解し、自身の資産運用方針に合ったヘッジ手法や投資タイミングを検討することが不可欠です。

執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。いろんな国や商品に投資。投資歴はまあまあ長め。基軸はインデックス投資での運用。短期売買はあまりせず、長期目線での投資をコツコツと。