はじめに
米国株式市場は、世界中の投資家にとって最も重要な市場の一つです。その動向は、経済指標や企業業績だけでなく、投資家心理にも大きく左右されます。投資家心理を測るための指標は数多く存在しますが、その中でも特に注目されるのが「NAAIM指数」です。NAAIM指数は、米国のアクティブ運用機関がどの程度リスクを取っているかを示す指標であり、市場のセンチメント(投資家心理)を読み解くための有力なツールとして知られています。
本記事では、NAAIM指数の定義とその計算方法を解説し、米国株式市場との関係性を探ります。さらに、過去の市場データを分析しながら、現在の米国株式市場がどのような局面にあるのかを考察します。
NAAIM指数の重要性
NAAIM指数は、National Association of Active Investment Managers(全米アクティブ投資運用協会)が毎週発表する指数です。この指数は、米国のアクティブ運用機関がどの程度リスクを取っているかを示すもので、市場の過熱感や冷え込みを測るための指標として活用されています。アクティブ運用機関は、市場のプロフェッショナルであり、その動向は市場全体の方向性を示唆することが多いため、NAAIM指数は投資家にとって重要な判断材料となっています。
NAAIM指数とは何か
NAAIM指数の定義と計算方法
NAAIM指数は、米国のアクティブ運用機関がどの程度リスクを取っているかを示す指標です。具体的には、NAAIMに加盟するアクティブ運用機関に対して、現在のポートフォリオのリスクエクスポージャー(リスクへの露出度)を調査し、その平均値を指数化したものです。調査は毎週行われ、結果は水曜日に発表されます。
NAAIM指数の計算方法は以下の通りです。
- NAAIMに加盟するアクティブ運用機関に対して、現在のポートフォリオのリスクエクスポージャーを調査します。
- 各機関のリスクエクスポージャーを集計し、平均値を算出します。
- この平均値を指数化し、NAAIM指数として発表します。
NAAIM指数の歴史と背景
NAAIM指数は、2006年に全米アクティブ投資運用協会(NAAIM)によって開始されました。NAAIMは、アクティブ運用機関の利益を代表する組織であり、そのメンバーは市場のプロフェッショナルとして知られています。NAAIM指数は、これらのプロフェッショナルがどの程度リスクを取っているかを示す指標として、市場のセンチメントを測るためのツールとして活用されています。
他のセンチメント指標との比較
NAAIM指数以外にも、市場のセンチメントを測るための指標は数多く存在します。例えば、VIX指数は市場のボラティリティ(変動性)を示す指標であり、投資家の恐怖や不安を反映します。また、AAIIセンチメント調査は、個人投資家のセンチメントを測るための調査です。しかし、NAAIM指数は、アクティブ運用機関の動向を直接反映する点で、他の指標とは一線を画しています。
学術的な根拠
NAAIM指数の有効性については、学術的にも一定の支持があります。例えば、BakerとWurgler(2006)は、投資家センチメントと株式リターンの関係を分析し、センチメント指標が市場の過熱感や冷え込みを示す有用なツールであることを示唆しています。また、Shiller(1981)は、市場の過剰反応とセンチメントの関係を分析し、投資家心理が市場動向に大きな影響を与えることを指摘しています。
NAAIM指数と米国株の関係
NAAIM指数が米国株式市場に与える影響
NAAIM指数は、米国株式市場のセンチメントを測るための有力なツールです。特に、S&P 500指数との相関関係が強く、NAAIM指数が高い局面では市場が過熱している可能性が高く、逆に低い局面では市場が冷え込んでいる可能性が高いとされています。
過去の市場データを用いた分析
過去の市場データを見ると、NAAIM指数が高い局面では、S&P 500のリターンが低下する傾向があります。例えば、2008年の金融危機前には、NAAIM指数が高水準に達し、その後市場が大幅に下落しました。同様に、2020年のコロナショック前にも、NAAIM指数が高水準に達し、市場の過熱感を示していました。
具体的な事例
- 2008年金融危機:NAAIM指数が高水準に達し、その後市場が大幅に下落しました。
- 2020年コロナショック:NAAIM指数が高水準に達し、その後市場が大幅に下落しました。
- 2022年利上げ局面:NAAIM指数が低水準に達し、その後市場が回復しました。
NAAIM指数が示す現在の市場センチメント
最新のNAAIM指数の値
2025年現在、NAAIM指数は過度の楽観の水準にあります。これは、市場が過熱していることを示します。
水準:80%を超えると過度の楽観、20%を下回ると過度の悲観
現在の米国株式市場の状況
現在の米国株式市場は、金利上昇やインフレ圧力、地政学リスクなど、多くの不確実性に直面しています。これらの要因が、NAAIM指数にどのように反映されているかを分析します。
アクティブ運用機関の現在のポジショニング
アクティブ運用機関は、現在の市場環境に対して慎重な姿勢を取っています。特に、金利上昇やインフレ圧力に対するリスク管理を重視していることが、NAAIM指数に反映されています。
専門家の見解
JPモルガンのアナリストは、「現在の市場環境は不確実性が高く、リスク管理が重要である」と指摘しています。一方、ゴールドマン・サックスは、「企業の収益力が高まっているため、市場にはまだ機会がある」と楽観的な見方を示しています。
NAAIM指数を活用した投資戦略
NAAIM指数が高い場合の戦略
NAAIM指数が高水準にある場合、以下の戦略が有効です。
- リスク管理の強化:市場調整に備えて流動性を高める。
- ディフェンシブ株へのシフト:景気後退に強いセクター(例:ヘルスケア、公益事業)に投資する。
- 分散投資:国際株式や債券など、他の資産クラスに分散する。
NAAIM指数が低い場合の戦略
NAAIM指数が低水準にある場合、以下の戦略が有効です。
- 積極的な株式投資:割安な局面で優良株を購入する。
- 長期投資:市場の回復を見据えて長期保有する。
ポートフォリオ構築における活用
NAAIM指数を活用することで、ポートフォリオのリスク管理を強化できます。例えば、NAAIM指数が高水準にある局面では、株式の割合を減らし、債券や現金の割合を増やすことが有効です。
まとめ
NAAIM指数は、米国株式市場のセンチメントを測るための有力な指標です。現在のNAAIM指数は中程度の水準にあり、市場が過熱しているわけでも、冷え込んでいるわけでもないことを示唆しています。しかし、市場環境は常に変化しており、投資家は柔軟な対応が求められます。
今後の市場動向を予測するためには、NAAIM指数だけでなく、金利動向や企業収益、地政学リスクなども考慮する必要があります。NAAIM指数を活用しながら、長期的な視点でポートフォリオを構築することが重要です。

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。