なぜ人は勝率が高いインデックス投資ではなく個別株投資をするのか?

インデックス投資と個別株投資 投資

インデックス投資?個別株投資?

「株式投資を始めたい!」そう思ったとき、まず最初に思い浮かぶのはどのような投資方法でしょうか?

多くの人がインデックス投資を勧める一方で、実際に個別株を選んで取引することに魅力を感じている投資家も少なくありません。特に、著名企業の株価が大きく上昇したときや、ニュースで取り上げられる株式の急騰を目にすると、個別株の方が「儲かりそうだ」と感じてしまいますよね。

しかしながら、現実には多くの個別株投資家が市場全体に勝てていないというデータがあります。逆に、S&P500のような優良な指数に連動するインデックス投資は、長期的に見て堅実なリターンをもたらしています。

では、なぜこれほど多くの投資家が個別株に夢を託し続けるのでしょうか?

インデックス投資とは?

インデックス投資は勝者のゲーム

インデックス投資の基本

インデックス投資とは、市場全体や特定の株価指数に連動する形で運用される投資のことを指します。

代表的なインデックスには、アメリカのS&P500、日本の日経225、そして世界全体をカバーするMSCI世界株指数などがあります。これらの指数に連動する投資信託やETF(上場投資信託)に資金を投じることで、個別の企業の株価に依存せず、市場全体の成長に期待して資産を増やすことができます。

インデックス投資は、「市場全体に賭ける」こととも言い換えられます。個々の企業が短期的に成功したり失敗したりしても、全体の市場が長期的には成長するという前提に立った投資手法です。この「分散投資」の力を活かし、リスクを抑えながら安定したリターンを狙うことができるのがインデックス投資の魅力です。

インデックス投資のメリット

インデックス投資の大きなメリットは、「リスク分散」と「手軽さ」にあります。市場全体や複数のセクターにまたがる広範な分散投資を行うため、個別の企業に依存するリスクを最小限に抑えることができます。例えば、ある企業が経営不振に陥ったとしても、他の成長している企業のパフォーマンスがそれを相殺してくれる可能性があります。

また、インデックス投資は一度投資すれば、日々のマーケットの動きを細かく追いかける必要がなく、非常に手軽です。バフェットが提唱するように、長期的にほったらかしで投資できる点も魅力的です。投資初心者でも取り組みやすい投資法と言えるでしょう。

インデックス投資の成功事例

実際、長期的にインデックス投資を続けた場合、個別株投資に勝るリターンが得られることが多いとされています。例えば、S&P500は過去数十年間で年平均リターンが約7%〜10%となっています。これは複利の効果も加わり、長期的な資産形成には非常に有利です。

有名な事例としては、著名な投資家ウォーレン・バフェットが、プロのヘッジファンド運用者との「S&P500が長期的にヘッジファンドに勝てるかどうか」という賭けで、インデックス投資が見事に勝利したことが挙げられます。インデックス投資は、専門的な知識を必要とせずに安定したリターンを狙うことができる、非常に有効な手法だということが証明されています。

プロでも指数(インデックス)に勝てない

米国内のアクティブ運用型株式ファンドの88.4%は、過去15年間で運用成績がそれぞれのベンチマークを下回っているというデータがあります。(参考レポート

個別株投資の魅力

個別株には夢があるが、その分・・・

個別株投資の夢

一方で、個別株投資には「夢」があります。個別の企業の成長に賭け、その企業が急成長すれば、短期間で大きな利益を得ることができるというスリルは、多くの投資家を惹きつけます。特に、ニュースで取り上げられる株式市場の成功事例を目にすると、自分も同じような成功を手に入れられるのではないかと感じることがあります。

例えば、TeslaやAmazon、Appleといった企業の株価は過去数年間で劇的に成長しました。こうした企業に早期に投資をしていた人たちは、大きなリターンを得ているはずです。個別株投資の魅力は、まさにこうした「一発逆転」を狙えるところにあります。

個別株投資の成功事例と失敗事例

成功事例にはTeslaやAmazonのように株価が数倍、あるいはそれ以上に膨れ上がるケースがあります。これにより、投資家は短期間で莫大な利益を得ることができます。実際に、Teslaの株価は数年の間に数百%の上昇を見せ、多くの投資家が「Teslaバブル」とも呼ばれるような現象を経験しました。

テスラ株価
Apple株価

しかし、失敗事例も少なくありません。企業は常に成功し続けるわけではなく、何らかのトラブルにより株価が急落することもあります。例えば、かつての栄光を誇ったエンロンやリーマン・ブラザーズのような企業は、突如として倒産し、多くの投資家が大きな損失を被りました。個別株投資は成功のチャンスと同時に、失敗のリスクも大きいのです。

リスクと報酬

個別株投資は、大きな利益を得られる可能性がある一方で、その分リスクも高いという特徴があります。企業の業績に依存するため、経営の失敗や業界全体の不振が直撃すると、投資額の大部分を失うリスクも考えなければなりません。個別株に集中投資をすると、そのリスクはさらに大きくなります。

なぜみんな個別株に夢中になるのか?

心理的要因

個別株に惹かれる大きな理由の一つは、人間の心理です。特に、「短期間で大きな利益を得る」という期待感は、多くの投資家にとって非常に魅力的です。これは一種の「ギャンブル性」に似ており、成功者の話が目立つほど、多くの人が自分もその成功を手に入れられるのではないかと感じてしまいます

また、メディアやSNSで取り上げられる成功事例が、この心理的な効果を強めています。個別株で大儲けをした人々がSNSで成功体験を共有することで、他の投資家たちもその波に乗ろうとします。この現象は「FOMO」(Fear Of Missing Out=機会損失への恐怖)と呼ばれ、多くの投資家が損失リスクを過小評価しがちになる原因となっています。

インデックス投資の優位性

長期的な成功率

個別株投資の夢やスリルに対して、インデックス投資は堅実で着実な資産形成を目指すものです。個別株投資のリスクが高いことを理解しているプロの投資家でさえ、インデックス投資の方がリターンを得やすいと考えることが一般的です。なぜなら、多くの個別株は市場全体の平均パフォーマンスにすら勝てないという現実があるからです。

例えば、S&P500に含まれる企業の多くが、過去数十年間で年平均リターン7%〜10%を実現してきました。一方で、個別株に賭ける投資家は、同じ期間にそのリターンを超えることができる確率は低いとされています。市場全体が成長する限り、インデックスに投資することで長期的には安定したリターンが期待できるのです。

データに裏付けられたパフォーマンス

多くの研究が、インデックス投資の方が個別株投資よりも高いリターンを得やすいことを示しています。たとえば、バンガードの調査によれば、プロのアクティブ運用ファンドマネージャーですら、長期的には市場平均に勝てるのはごく少数です。このことは、個別株投資を行う多くの個人投資家にも当てはまります。

さらに、インデックス投資は手数料が非常に低く抑えられていることも、長期的なパフォーマンスを向上させる要因となっています。個別株投資やアクティブ運用ファンドには取引コストや高額な手数料が発生し、これがリターンを大きく削ることになります。インデックスファンドやETFは、これらのコストを最小限に抑えることができ、結果として投資家の利益を最大化します。

「勝つことより負けないこと」の重要性

投資の世界では、「勝つこと」よりも「負けないこと」が長期的には重要だという考え方があります。特に、個別株投資における大きな失敗は、資産を大幅に減らしてしまう可能性があり、その回復には長い時間が必要です。一方で、インデックス投資は市場全体に分散されているため、個別株のような極端な失敗のリスクが低く、安定した成長が見込まれます。

たとえば、リーマンショックやコロナショックのような大きな市場の下落があっても、インデックス投資を続けていた投資家は、長期的には回復し、その後の成長を享受しています。この「負けにくさ」こそが、インデックス投資の最大の強みであり、短期的な利益よりも長期的な資産形成を目指す投資家にとって非常に有利です。

まとめ

インデックス投資と個別株投資は、それぞれ異なる魅力を持っています。個別株投資は、大きな利益を短期間で得るチャンスがある一方で、その分リスクも大きく、集中投資をしてしまうと破綻の可能性もある危険な投資方法です。一方、インデックス投資は、広範な分散と低コストで安定したリターンを狙うことができ、長期的な資産形成において非常に有効です。

なぜ多くの投資家が個別株に夢中になるのかという問いに対しては、「スリル」と「短期的な大きな利益」という心理的要因が大きく関係していると言えるでしょう。特に、SNSやメディアで成功事例が目立つことで、自分も同じような成功を手に入れられるのではないかという期待が膨らんでしまいます。しかし、現実には多くの個別株投資家が市場平均に勝てていないという事実を踏まえると、インデックス投資の堅実さと優位性を無視することはできません。

「一発逆転」を狙うか、「堅実な資産形成」を目指すか。どちらの選択肢を選ぶかは、リスク許容度や投資スタイルに依存します。しかし、インデックス投資の強みを理解し、長期的に着実な成長を望むならば、市場全体に賭ける方が成功の確率は高いと言えるでしょう。

執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。いろんな国や商品に投資。投資歴はまあまあ長め。基軸はインデックス投資での運用。短期売買はあまりせず、長期目線での投資をコツコツと。