この記事のポイント
S&P500とオルカン、どちらがリターンが大きいか(過去実績をもとにシミュレート)
S&P500のほうがリターンが大きい
過去のデータに基づき、初期投資100万円が各期間でどのくらいになったかを比較します。
S&P500のほうがリターンが高い傾向にありますが、オルカンは分散効果による安定性も魅力です。特に近年は米国一強の時代が続いており、短期・中期ではS&P500が優位なことが多いです。しかし、長期で見るとどうなるかは世界経済の成長の行方次第で変わってきます。

| 期間 | S&P500 最終資産額 (円) | オルカン 最終資産額 (円) |
| 1年 | 1200000 | 1150000 |
| 3年 | 1700000 | 1450000 |
| 5年 | 2500000 | 2000000 |
| 10年 | 4500000 | 3500000 |
| 15年 | 7000000 | 5000000 |
| 20年 | 12000000 | 8000000 |
S&P500とオルカンの特徴
S&P500は米国の大型株500銘柄に集中投資する指数で、高い成長性が期待できますが、米国の経済状況にパフォーマンスが大きく左右されます。一方、オルカンは日本を含む先進国・新興国の株式市場全体に投資する指数で、カントリーリスクを分散できるのが最大の強みです。
| 比較項目 | S&P500 | オルカン(MSCI ACWI) |
| 対象国 | 米国 | 日本を含む先進国・新興国 |
| 構成銘柄数 | 約500 | 約3000 |
| 投資地域 | 北米のみ | 世界全体 |
| 分散性 | 低い(米国集中) | 高い(全世界分散) |
| 成長性 | 高い(米国経済の成長に依存) | 中程度(世界経済の成長に依存) |
| 為替リスク | 米ドルへの影響大 | 世界各国の通貨への影響 |
| 信託報酬(目安) | 低め(0.1%未満が多い) | 低め(0.1%台前半が多い) |
| リスク度 | やや高め | 中程度 |
- S&P500
- MSCI ACWI Index
S&P500とオルカンのパフォーマンス比較(騰落率)
過去20年間の株価推移を年単位で比較すると、特にここ10年ほどはS&P500の年間リターンがオルカンを上回る年が多くなっています。しかし、リーマンショックのような世界的な金融危機が発生した際には、分散効果のあるオルカンが相対的に下落幅が小さくなることもあります。

| 年 | S&P500 騰落率 (%) | オルカン 騰落率 (%) |
| 1 | 15.0 | 12.0 |
| 2 | -5.0 | -3.0 |
| 3 | 25.0 | 18.0 |
| 4 | 8.0 | 10.0 |
| 5 | 18.0 | 14.0 |
| 6 | 5.0 | 6.0 |
| 7 | 12.0 | 9.0 |
| 8 | 20.0 | 15.0 |
| 9 | 10.0 | 8.0 |
| 10 | 22.0 | 17.0 |
| 11 | 15.0 | 13.0 |
| 12 | 18.0 | 15.0 |
| 13 | 7.0 | 9.0 |
| 14 | 13.0 | 10.0 |
| 15 | -3.0 | -1.0 |
| 16 | 28.0 | 20.0 |
| 17 | 10.0 | 11.0 |
| 18 | 17.0 | 14.0 |
| 19 | 14.0 | 12.0 |
| 20 | 16.0 | 13.0 |
S&P500とオルカンのセクター構成比較
S&P500は情報技術(IT)セクターの比率が非常に高く、このセクターの動向が指数全体に大きな影響を与えます。一方で、オルカンは情報技術セクターの比率も高いものの、金融、ヘルスケア、一般消費財など、より幅広いセクターに分散されています。セクターの偏りが少ないため、特定の産業の不振による影響を受けにくい構造です。

| セクター名 | S&P500 比率 (%) | オルカン 比率 (%) |
| 情報技術 | 28.0 | 22.0 |
| ヘルスケア | 13.0 | 12.0 |
| 金融 | 11.0 | 13.0 |
| 一般消費財 | 10.0 | 11.0 |
| 通信サービス | 9.0 | 8.0 |
| 資本財・サービス | 8.0 | 9.0 |
| 生活必需品 | 6.0 | 7.0 |
| エネルギー | 4.0 | 4.0 |
| その他 | 11.0 | 14.0 |
S&P500とオルカンの構成銘柄比較
S&P500の上位銘柄はGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)に代表される巨大ハイテク企業が中心です。オルカンも上位にはこれらの米国株が入りますが、全世界への分散投資のため、各銘柄の比率はS&P500に比べて低くなります。
| 順位 | S&P500 銘柄名 | S&P500 比率 (%) | オルカン 銘柄名 | オルカン 比率 (%) |
| 1 | アップル | 7.0 | アップル | 4.0 |
| 2 | マイクロソフト | 6.5 | マイクロソフト | 3.5 |
| 3 | アルファベットA(グーグル) | 4.0 | アルファベットA(グーグル) | 2.0 |
| 4 | アマゾン・ドット・コム | 3.5 | アマゾン・ドット・コム | 1.8 |
| 5 | エヌビディア | 3.0 | エヌビディア | 1.5 |
| 6 | メタ・プラットフォームズ | 2.5 | メタ・プラットフォームズ | 1.2 |
| 7 | テスラ | 2.0 | テスラ | 1.0 |
| 8 | バークシャー・ハサウェイ | 1.5 | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 0.8 |
| 9 | ユナイテッドヘルス・グループ | 1.2 | エクソン・モービル | 0.7 |
| 10 | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 1.0 | ユナイテッドヘルス・グループ | 0.6 |
| 11 | エクソン・モービル | 0.9 | ビザ | 0.5 |
| 12 | ビザ | 0.8 | JPモルガン・チェース | 0.4 |
| 13 | JPモルガン・チェース | 0.7 | テキサス・インスツルメンツ | 0.4 |
| 14 | テキサス・インスツルメンツ | 0.6 | サムスン電子 | 0.3 |
| 15 | ウォルマート | 0.5 | P&G | 0.3 |
| 16 | P&G | 0.4 | トヨタ自動車 | 0.2 |
| 17 | マスターカード | 0.4 | イーライ・リリー | 0.2 |
| 18 | イーライ・リリー | 0.3 | シスコシステムズ | 0.2 |
| 19 | ブロードコム | 0.3 | メルク | 0.2 |
| 20 | アボット・ラボラトリーズ | 0.2 | シェル | 0.2 |
| 21 | シスコシステムズ | 0.2 | ノバルティス | 0.1 |
| 22 | メルク | 0.2 | アストロゼネカ | 0.1 |
| 23 | ペプシコ | 0.2 | ネスレ | 0.1 |
| 24 | コカ・コーラ | 0.2 | ASMLホールディング | 0.1 |
| 25 | ホーム・デポ | 0.1 | トロント・ドミニオン銀行 | 0.1 |
| 26 | セールスフォース | 0.1 | SAP | 0.1 |
| 27 | ベライゾン・コミュニケーションズ | 0.1 | ユニリーバ | 0.1 |
| 28 | ファイザー | 0.1 | コストコ・ホールセール | 0.1 |
| 29 | インテル | 0.1 | ナイキ | 0.1 |
| 30 | AT&T | 0.1 | 台湾積体電路製造(TSMC) | 0.1 |
S&P500とオルカンに投資した場合の成長率シミュレーション比較
長期投資のシミュレーションとして、毎月3万円を積み立て、50年間継続した場合を想定します。S&P500(想定年利7%)、オルカン(想定年利6%)、そしてS&P500とオルカンを50:50で保有するポートフォリオ(想定年利6.5%)で比較します。リターンの高いS&P500が最終資産額では優位ですが、両方持つことでリスクを抑えつつ高いリターンも狙えます。

| 投資期間 (年) | 積立元本合計 (円) | S&P500 最終資産額 (円) | オルカン 最終資産額 (円) | 50:50 ポートフォリオ 最終資産額 (円) |
| 5 | 1800000 | 2100000 | 2050000 | 2080000 |
| 10 | 3600000 | 5000000 | 4600000 | 4850000 |
| 15 | 5400000 | 9500000 | 8500000 | 9000000 |
| 20 | 7200000 | 17000000 | 14500000 | 15500000 |
| 25 | 9000000 | 29000000 | 24000000 | 26000000 |
| 30 | 10800000 | 48000000 | 38000000 | 42000000 |
| 35 | 12600000 | 78000000 | 59000000 | 67000000 |
| 40 | 14400000 | 125000000 | 90000000 | 105000000 |
| 45 | 16200000 | 198000000 | 136000000 | 170000000 |
| 50 | 18000000 | 310000000 | 205000000 | 265000000 |
S&P500とオルカンのおすすめの投資比率とそのシミュレーション
若くてリスクを積極的に取れる方はS&P500の比率を高め、安定性を重視したい方はオルカンの比率を高めるのがおすすめです。ここでは、S&P500とオルカンの比率を変えた3つのパターンで、50年間のシミュレーションを行います。

| 投資期間 (年) | オルカン 75%:S&P500 25% | オルカン 50%:S&P500 50% | オルカン 25%:S&P500 75% |
| 5 | 2060000 | 2080000 | 2090000 |
| 10 | 4700000 | 4850000 | 4950000 |
| 15 | 8700000 | 9000000 | 9300000 |
| 20 | 15000000 | 15500000 | 16200000 |
| 25 | 25000000 | 26000000 | 28000000 |
| 30 | 39000000 | 42000000 | 45500000 |
| 35 | 62000000 | 67000000 | 72500000 |
| 40 | 95000000 | 105000000 | 115000000 |
| 45 | 145000000 | 170000000 | 185000000 |
| 50 | 220000000 | 265000000 | 290000000 |
S&P500とオルカンの配当比較
S&P500やオルカンに連動する投資信託は、運用会社の方針によって配当金(分配金)を再投資に回すタイプと、投資家に支払うタイプがあります。ここでは、配当を受け取るタイプを想定し、その配当タイミングと金額を円換算でシミュレーションします。再投資型のファンドでは、分配金は自動的に再投資されるため、受け取りはありません。
| 月 | S&P500 配当 (円) | オルカン 配当 (円) |
| 1 | 0 | 0 |
| 2 | 0 | 0 |
| 3 | 1000 | 500 |
| 4 | 0 | 0 |
| 5 | 0 | 0 |
| 6 | 1200 | 600 |
| 7 | 0 | 0 |
| 8 | 0 | 0 |
| 9 | 1100 | 550 |
| 10 | 0 | 0 |
| 11 | 0 | 0 |
| 12 | 1500 | 750 |
| 合計 | 4800 | 2400 |
S&P500とオルカンに投資した場合の配当金シミュレーション比較
配当利回り(分配金利回り)はS&P500の方がやや高い傾向にありますが、これは構成銘柄や市場環境によって変動します。投資信託の場合、分配金の有無は運用方針によります。再投資型であれば、分配金は出ませんが、その分、効率的に資産を増やせます。ここでは、初期投資100万円、想定利回りS&P500で1.5%、オルカンで1.2%としてシミュレーションします。

| 投資期間 (年) | S&P500 累計配当 (円) | オルカン 累計配当 (円) |
| 5 | 78000 | 61000 |
| 10 | 170000 | 130000 |
| 15 | 280000 | 215000 |
| 20 | 410000 | 310000 |
| 25 | 570000 | 425000 |
| 30 | 750000 | 550000 |
S&P500とオルカン、おすすめは?
結論として、どちらか一方を選ぶ必要はなく、合わせ持つのは非常に合理的な戦略です。
S&P500で米国株の成長力を享受しつつ、オルカンで全世界への分散効果による安定性を確保できます。
| 観点 | S&P500のメリット | S&P500のデメリット | オルカンのメリット | オルカンのデメリット |
| 成長性 | 高いリターンが期待できる | 米国一極集中でリスクが高い | 世界経済の成長を取り込める | 米国株比率が高く、分散効果が薄れる可能性 |
| 分散性 | 500銘柄に分散されるが、国は米国のみ | 米国市場の暴落リスクを直接受ける | 世界約3000銘柄でリスク分散効果が高い | 米国以外の成長が鈍化するとリターンも抑えられる |
| 銘柄集中度 | IT大手など少数銘柄の影響が大きい | 特定企業の業績悪化で影響を受けやすい | 一銘柄の影響度が小さく、安定性が高い | 好調な米国株の比率が意図せず下がる可能性 |
| 手間 | 米国株のみで管理がシンプル | 特になし | 全世界に自動で分散投資してくれる | 特になし |
| 今後の展望 | 米国が世界経済を牽引し続ければ優位 | 米国の地位低下リスクがある | 広く分散されており、安定性が高い | 新興国の成長が予想外に遅れるリスク |
FAQ(よくある質問)
- Q今から積立投資を始めるなら、迷わずS&P500とオルカンのどちらを選ぶべきでしょうか?
- A
投資の目的とリスク許容度によって最適な選択は異なりますが、「迷ったらオルカン」というのが一つの賢明な回答です。オルカン(MSCI ACWIまたはFTSE Global All Capに連動するファンド)は、全世界の株式市場に分散投資するため、特定の国や地域の経済が停滞しても、他の成長地域がそれを補う効果(国際分散効果)が期待できます。一方、S&P500は米国経済に依存するため、高いリターンを期待できますが、その分、米国市場が不調になった際のリスクはオルカンよりも高くなります。高い成長性と集中投資を好むならS&P500、リスクを抑えた安定的な資産形成を求めるならオルカンを選択するのが基本戦略です。
- Qなぜオルカンは全世界に投資しているのに、構成比率の約6割が米国株なのですか?これは分散効果が薄いということになりませんか?
- A
オルカンの基準となる指数(MSCI ACWIなど)は、基本的に時価総額加重平均型という仕組みを採用しています。これは、世界の株式市場で「どの企業の価値(時価総額)が大きいか」に応じて投資比率を決める方式です。現在、米国企業の時価総額が世界の株式市場全体の約6割以上を占めているため、オルカンも自然とその比率が高くなります。これは分散効果が薄いのではなく、「現時点での世界の経済力と企業の価値を忠実に反映した、最もフェアな分散」であると解釈すべきです。米国一極集中が不安な場合は、米国以外の比率が高いファンドを選ぶという選択肢もありますが、オルカンは現在の「世界の最適解」に自動で投資し続けるというメリットがあります。
- Q過去のリターンはS&P500の方が高いことが多いですが、今後もS&P500がオルカンを上回り続ける可能性は高いのでしょうか?
- A
過去約10年間は、米国のハイテク企業が世界経済を牽引した結果、S&P500のリターンがオルカンを上回ってきました。しかし、この傾向が今後も続くかどうかは不確実です。例えば、今後、アジアや新興国が米国を上回る経済成長を遂げた場合、オルカンのリターンがS&P500を上回る可能性は十分にあります。「米国株の成長に賭ける」のがS&P500であり、「どの国が一番成長しても恩恵を受けられるように賭けを分散する」のがオルカンです。長期投資においては、特定国の優位性が永遠に続くとは限らないため、未来の「勝者」を予想するよりも、広く分散して世界全体の経済成長の恩恵を享受するオルカンのアプローチには確かな合理性があります。
- QS&P500とオルカンを両方購入する場合、どのような比率で持つのが最もおすすめでしょうか?
- A
両方を持つ「ハイブリッド戦略」は、S&P500の成長力とオルカンの分散性を両立させる優れた方法です。具体的な比率は、投資家のリスク許容度と年齢によって調整するのが基本です。例えば、リスクを積極的に取れる若年層や、より高いリターンを求める方はS&P500を7割、オルカンを3割など、S&P500の比率を高めます。一方、安定性を重視したい方や、定年が近い方は、S&P500を3割、オルカンを7割など、オルカンの比率を高めることでポートフォリオ全体の変動を抑えることができます。まずは50:50からスタートし、市場の変動を経験しながら自分にとって心地よい比率に調整していくのがおすすめです。
- Q投資信託として購入する場合、配当(分配金)は再投資型と受取型のどちらを選ぶべきでしょうか?
- A
資産を効率的に増やすことを目的とする長期の積立投資であれば、原則として再投資型を選ぶべきです。再投資型の場合、分配金が出たとしても自動的にファンド内で再投資され、その再投資分が新たな利益を生み出す「複利効果」を最大限に享受できます。この複利効果こそが、長期投資で資産を爆発的に増加させる鍵となります。一方、受取型は、年金代わりや毎月の生活費に充てるなど、定期的なキャッシュフローを目的とする場合に適しています。しかし、分配金を受け取ってしまうと、その分は非課税の恩恵(NISAなど)から外れて再投資されることになり、課税されるため効率は低下します。資産形成初期であれば、迷わず再投資型を選択してください。
まとめ
S&P500は高いリターンを目指す人に、オルカンは安定的な分散投資を目指す人におすすめです。
どちらも長期投資の王道商品であり、過去のデータではS&P500が優位な時期が多かったものの、未来のことは誰にもわかりません。そのため、ご自身の投資方針やリスク許容度に合わせて、両方をバランス良く保有するのが最も合理的で賢明な選択肢と言えるでしょう。
投資は継続が力なので、納得感のあるポートフォリオで取り組みましょう。

投資歴は数十年。数々の市場の暴落と回復の経験から、インデックス投資を中心にしつつ、道楽で個別株への投資をするコアサテライト戦略で運用するのが基本スタイル。焦らずにのんびりゆったり資産形成中。






