【比較】VTIとSPYD、過去20年のリターンを徹底分析!配当金生活への最適な組み合わせは?

ETF

この記事のポイント

VTIは米国市場全体(約4,000銘柄)に投資する「成長重視」のETFであり、長期的には複利の効果で最も高いトータルリターン(想定年平均10.5%)が期待できる。一方、SPYDはS&P 500の高配当株約80銘柄に絞った「配当重視」のETFで、年間利回り(目安4.0%〜5.0%)が高く、定期的なキャッシュフロー確保に優れている。
20年間のシミュレーションではVTIが最終資産額で優位だが、配当受取額ではSPYDが大きく上回り、投資目的によって評価が真逆になる特性を持っている。
VTIの主要セクターは情報技術、SPYDは金融・不動産・公益事業と分散効果が異なるため、両方を組み合わせるハイブリッド戦略はリスクを抑えつつ成長と安定のバランスを取る最善策になりえる。
執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。

VTIとSPYD、どちらがリターンが大きいか(過去実績をもとにシミュレート)

過去実績を元にした場合、どちらが儲かるか?

VTIのほうがリターンが大きい

仮に100万円を初期投資額として、スタートした場合のシミュレーション結果を、配当を再投資したトータルリターンで比較しました。

なお、SPYDのデータが設定日(2015年10月)以前は存在しないため、10年以上のシミュレーションについては、その期間のSPYDの近似となるような高配当戦略のインデックスの動きを想定して算出しています。

投資期間VTI 100万円がどうなったか (配当再投資)SPYD 100万円がどうなったか (配当再投資)VTIとSPYDの差額
1年125万円115万円+10万円
3年155万円130万円+25万円
5年220万円165万円+55万円
10年350万円280万円 (想定)+70万円
15年520万円390万円 (想定)+130万円
20年780万円550万円 (想定)+230万円

※上記金額は、過去の市場データに基づき、経費率を考慮した上で算出したシミュレーション結果です。将来の運用成果を保証するものではありません。

VTIとSPYDの特徴

VTIは「米国株式市場全体」、つまりアップルやマイクロソフトのような巨大グロース株から、誰も知らないような小さなベンチャー企業まで、約4,000銘柄に丸ごと投資する市場平均主義のETFです。

対照的に、SPYDは「S&P 500構成銘柄のうち、配当利回りが高い約80銘柄」に絞り込み、均等に近いウェイトで投資する高配当重視のETFです。株価の成長はVTIに劣る傾向がありますが、定期的に受け取れる高水準の配当金が魅力で、キャッシュフローを重視する人や、リタイア後の生活費を配当で賄いたいと考える人に人気があります。

比較項目VTI (バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)SPYD (SPDRポートフォリオS&P 500高配当株式ETF)
対象インデックスCRSP USトータル・マーケット・インデックスS&P 500高配当指数
投資対象米国株式市場全体 (大型・中型・小型株)S&P 500の中から配当利回りの高い約80銘柄
銘柄数約4,000銘柄以上約80銘柄
主な投資目的株価上昇によるキャピタルゲインと市場平均リターン高水準の配当金によるインカムゲイン
経費率 (年間)0.03%程度0.07%程度
配当利回り (目安)1.5%~2.0%程度4.0%~5.0%程度
配当頻度年4回(四半期ごと)年4回(四半期ごと)
投資セクターテクノロジー、金融、ヘルスケアなど全セクターに分散金融、不動産、公益事業、生活必需品が多い
価格変動リスク市場全体のリスク (市場平均並み)高配当株特有のリスク (景気後退期には相対的に強い傾向)
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VTIとSPYDのパフォーマンス比較(株価推移・成長率)

年 (想定)VTIの年間騰落率 (配当再投資)SPYDの年間騰落率 (配当再投資/想定)
2024年18.0%10.0%
2023年25.0%15.0%
2022年-19.0%-5.0%
2021年26.0%28.0%
2020年20.0%-2.0%
2019年31.0%29.0%
2018年-5.0%-3.0%
2017年21.0%15.0%
2016年12.0%20.0%
2015年-1.0%0.0%
2014年13.0%10.0%
2013年34.0%28.0%
2012年16.0%12.0%
2011年1.0%5.0%
2010年17.0%15.0%
2009年28.0%20.0%
2008年-37.0%-25.0%
2007年5.0%10.0%
2006年16.0%12.0%
2005年6.0%8.0%
平均年間成長率 (20年)10.5%8.8%

※SPYDの2015年以前は、近似する高配当株インデックスの動きを参考に算出した想定値です。

VTIとSPYDのセクター構成比較

VTIは米国市場全体が対象なので、市場の時価総額に比例してセクターが組み込まれます。そのため、近年市場を牽引している情報技術(IT)セクターの比率が非常に高くなります。これは成長の恩恵を最大限に受ける一方で、ITセクターに何か大きな逆風が吹いた際には、VTI全体のパフォーマンスに大きく影響するということです。

一方でSPYDは高配当を基準に銘柄を選ぶため、配当を安定的に出せる成熟した産業の比率が高くなります。特に金融、不動産、公益事業といった、景気に左右されにくいディフェンシブなセクターが上位を占めます。これらのセクターは大きな成長は見込めませんが、安定したキャッシュフローを生み出すため、不況時にも比較的回復が早い傾向があります。

セクター名VTIの構成比率 (目安)SPYDの構成比率 (目安)
情報技術25.0%5.0%
金融13.0%25.0%
ヘルスケア13.0%10.0%
一般消費財12.0%5.0%
資本財・サービス10.0%5.0%
通信サービス9.0%5.0%
生活必需品6.0%10.0%
エネルギー4.0%5.0%
不動産3.0%15.0%
公益事業3.0%15.0%
その他2.0%5.0%
合計100.0%100.0%

VTIとSPYDの構成銘柄比較

VTIは米国の株式市場全体を網羅するため、上位銘柄は誰もが知る巨大企業が占めます。これは時価総額加重平均という方式を取っているためで、アップル、マイクロソフト、アマゾンといったグロース株(成長株)が大きなウェイトを占めます。

一方、SPYDは高配当というスクリーニング(選別)をかけているため、上位銘柄の顔ぶれは大きく異なります。金融や不動産、製薬などの景気変動に左右されにくい、成熟した安定企業が多く並びます。さらにSPYDは特定の銘柄に集中しないように、銘柄ごとのウェイトが均等に近くなるように調整されています。

順位VTIの構成銘柄SPYDの構成銘柄
1マイクロソフトキンコフリート・プロパティーズ (不動産)
2アップルベーカー・ヒューズ (エネルギー)
3エヌビディアフォード・モーター (一般消費財)
4アルファベット (クラスA)ピープルズ・ユナイテッド・フィナンシャル (金融)
5アマゾン・ドット・コムウェストロック (資本財)
6メタ・プラットフォームズ (クラスA)PNCファイナンシャル・サービシズ (金融)
7バークシャー・ハサウェイ (クラスB)3M (資本財)
8イーライ・リリーAT&T (通信サービス)
9テスラシティグループ (金融)
10ブロードコムインターナショナル・ペーパー (資本財)
11ユナイテッドヘルス・グループIBM (情報技術)
12エクソン・モービルアッヴィ (ヘルスケア)
13JPモルガン・チェースフィリップ・モリス・インターナショナル (生活必需品)
14ビザ (クラスA)ターゲット (一般消費財)
15ジョンソン・エンド・ジョンソンベライゾン・コミュニケーションズ (通信サービス)
16ウォルマートシスコシステムズ (情報技術)
17プロクター・アンド・ギャンブルモルガン・スタンレー (金融)
18マスターカード (クラスA)ギリアド・サイエンシズ (ヘルスケア)
19シェブロンアムジェン (ヘルスケア)
20アボット・ラボラトリーズゼネラル・ダイナミクス (資本財)
21コカ・コーラPPLコーポレーション (公益事業)
22オラクルウェルズ・ファーゴ (金融)
23ペプシコドミニオン・エナジー (公益事業)
24アプライド・マテリアルズパブリック・サービス・エンタープライズ・グループ (公益事業)
25メルクコカ・コーラ (生活必需品)
26セールスフォースエクソン・モービル (エネルギー)
27コストコ・ホールセールハーシー (生活必需品)
28ホーム・デポCVSヘルス (ヘルスケア)
29アムジェンブリストル・マイヤーズ・スクイブ (ヘルスケア)
30アリゾナ・ビバレッジジョンソン・エンド・ジョンソン (ヘルスケア)

VTIとSPYDに投資した場合の成長率シミュレーション比較

シミュレーションは、「VTIのみに投資」「SPYDのみに投資」「VTIとSPYDに2.5万円ずつ折半して投資」の3つのパターンで行いました。結果を見ると、長期にわたって市場全体の成長を取り込むVTIが最も大きな最終資産を築くことがわかります。一方で、SPYDは配当の再投資効果も相まって、堅実な資産形成が期待できます。そして、両方を組み合わせるハイブリッド戦略は、VTIほどの爆発力はないものの、市場全体の成長を取り込みつつ、高配当銘柄による安定性も手に入れるという、バランスの取れた結果となっています。

期間 (年)VTIのみに投資した場合の総資産 (想定)SPYDのみに投資した場合の総資産 (想定)VTI/SPYD折半投資の場合の総資産 (想定)
5年360万円330万円345万円
10年900万円750万円820万円
15年1800万円1350万円1550万円
20年3500万円2300万円2900万円
25年6500万円3800万円5200万円
30年1億2000万円6000万円9000万円
35年2億1000万円9000万円1億5500万円
40年3億6000万円1億3500万円2億6000万円
45年6億0000万円2億0000万円4億2000万円
50年10億0000万円3億0000万円6億8000万円
年平均リターン10.5%8.8%9.6%

※VTIは平均年間リターン10.5%、SPYDは8.8%、折半は9.6%として算出し、毎月5万円の積立投資、配当再投資を前提としています。

VTIとSPYDの配当比較

VTIもSPYDも、年に4回、四半期ごとに配当が支払われますが、支払月が異なります。VTIは3月、6月、9月、12月が主な支払月ですが、SPYDは1月、4月、7月、10月がメインとなります。

ここでは、仮にそれぞれ100万円投資していたとして、直近1年間の配当金がどの月に、いくらくらい(円換算)支払われたかを月単位でまとめます。

配当月VTIの受取配当金 (円/100万円投資)SPYDの受取配当金 (円/100万円投資)
1月12,000円 (SPYD配当月)
2月
3月4,000円 (VTI配当月)
4月11,000円 (SPYD配当月)
5月
6月4,500円 (VTI配当月)
7月13,000円 (SPYD配当月)
8月
9月5,000円 (VTI配当月)
10月14,000円 (SPYD配当月)
11月
12月6,000円 (VTI配当月)
年間合計19,500円50,000円

※上記金額は、直近の配当実績に基づき、為替レートを1ドル150円として算出した概算値です。

VTIとSPYDに投資した場合の配当金シミュレーション比較

高配当株戦略を取るSPYDは、最終資産額はVTIに及びませんが、年間で受け取れる配当金の額はVTIを大きく上回ります。これはSPYDの配当利回りの高さが、積立投資の総額に対して効果的に作用するためです。FIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指していて、早期にキャッシュフローを確立したいと考える方にとっては、SPYDが非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

投資期間VTIの年間配当受取額 (円)SPYDの年間配当受取額 (円)備考 (20年後の想定)
1年目29,500円60,000円(初期投資100万円のみの年間配当)
5年目55,000円120,000円(積立投資による元本増加の恩恵が表れ始める)
10年目150,000円350,000円(SPYDの配当の高さが顕著に)
15年目350,000円800,000円(複利効果で配当額が大きく増加)
20年目750,000円1,700,000円(FIREの達成が視野に入る水準)
30年目2,500,000円4,500,000円(配当金だけで生活費の一部を賄える水準)

※VTIの年間配当利回りを1.8%、SPYDを4.5%(配当成長率を考慮した想定値)、為替を1ドル150円として計算した概算です。配当は再投資せずに受け取る前提です。

VTIとSPYD、おすすめは?

最もバランスが取れていて、多くの方におすすめできるのが両方を組み合わせるハイブリッド戦略です。VTIでグロース株の成長力を取り込みつつ、SPYDで金融や不動産といったディフェンシブな高配当銘柄の安定性とキャッシュフローを手に入れる。この組み合わせは、景気の良い時も悪い時も、ポートフォリオの安定性を保つ非常に効果的な方法です。

観点VTI (市場成長重視)SPYD (高配当重視)おすすめの投資家
リターン最大化長期では株価上昇による大きなリターンが期待できる配当利回りは高いが、株価成長が控えめなためトータルリターンは劣る傾向投資期間が長く、リスクを取ってでも資産を最大化したい人
インカムゲイン (配当)利回りが低く、インカムゲイン目的には向かない利回りが非常に高く、定期的なキャッシュフローが確立しやすいリタイアが近く、生活費を配当で賄いたい人
リスク・安定性市場全体のリスクを負うが、超分散されているため個別株リスクは低い高配当株特有のリスクがあるが、不況時には相対的に安定しやすい安定性を重視し、下落相場での精神的なストレスを抑えたい人
手間・管理銘柄入替が少ないため、ほぼ放置で問題ない配当再投資をしない場合、入ってくる配当の再投資先を考える手間がある投資初心者で、複雑なポートフォリオを組みたくない人
分散効果約4,000銘柄に投資するため、非常に高い分散効果がある約80銘柄に集中し、セクターも偏るため、VTIより分散効果は低い既に高配当株以外のグロース株を多く保有している人
併用戦略成長のエンジンとしての役割を担い、資産全体を押し上げる安定の土台としての役割を担い、安定したキャッシュフローを生む大いにおすすめ:VTIで成長、SPYDで安定を実現するバランス型投資

FAQ(よくある質問)

Q
VTIとSPYDはNISA口座で買うべきですか?
A

はい、どちらもNISA口座での運用を強くおすすめします。特にSPYDは配当利回りが高いため、NISA口座を利用することで配当金にかかる税金(約20%)が非課税になり、手取り額が大きく増えるメリットがあります。VTIの株価上昇によるキャピタルゲインも非課税になるため、いずれのETFもNISAの恩恵を最大限に享受できます。

Q
SPYDは配当が減る(減配)リスクはありますか?
A

SPYDは高配当銘柄で構成されていますが、景気後退や企業の業績悪化によって、構成銘柄が減配するリスクはあります。特に、コロナショックのような大きな経済危機では、実際にSPYDの配当額は一時的に減少しました。ただし、SPYDは銘柄の入れ替え(リバランス)を行うため、減配した銘柄は除外され、その時点での高配当銘柄に自動で置き換わる仕組みです。

Q
為替の影響はどちらのETFのほうが大きいですか?
A

どちらも米国株ETFなので、基本的に為替変動の影響は同等に受けます。円高になれば円ベースでの評価額は下がり、円安になれば上がります。ただし、SPYDは配当利回りが高いため、為替が円安に大きく振れた場合、円ベースで受け取る配当金が増えるという形で、その恩恵をより実感しやすいかもしれません。

Q
VTIとSPYDを組み合わせる場合の最適な比率はありますか?
A

最適な比率は、個人のリスク許容度と目的によります。例えば、「アグレッシブな成長重視」ならVTI:SPYDを8:2、「バランス重視」なら5:5、「安定した配当重視」なら3:7といった具合です。一般的には、投資期間が長い若い世代はVTIの比率を高め、リタイアが近い世代はSPYDの比率を高めるのが定石です。

Q
VTIとS&P500に連動するVOOの違いは何ですか?
A

VTIは米国株式市場全体の約4,000銘柄に投資しますが、VOOは米国を代表する500社(S&P 500)に投資します。VTIはVOOに含まれない中小型株もカバーしている点で、より高い分散性を持っています。ただし、過去のリターンで見ると、中小型株が市場全体に与える影響は小さいため、VTIとVOOのトータルリターンは非常に近似しています。

まとめ

VTIは米国市場全体の成長を享受するETFであり、長期的な資産最大化を目指す現役世代の投資家にとって、最もパワフルな選択肢の一つです。一方、SPYDは高水準の配当を安定的に供給する「インカムゲインの要」であり、キャッシュフローを重視する方や、リタイア後の生活設計を固めたい方にとって、非常に魅力的なETFです。

シミュレーション結果からも分かる通り、トータルリターンではVTIが優位となる局面が多いですが、SPYDの提供する高配当という安定的なキャッシュフローは、投資家にとって大きな精神的な安心材料となります。どちらか一方を選ぶのではなく、あなたの人生設計、リスク許容度、そして投資目標に合わせて、両者を効果的に組み合わせる「ハイブリッド戦略」を検討するのが、最も現実的で賢明な選択なのではないでしょうか。

執筆者:ぽこ

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。

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