永久ポートフォリオとは?

永久ポートフォリオとは、どんな経済環境でも安定したリターンを目指すための資産配分戦略で、1980年代に投資家ハリー・ブラウンによって提唱されました。
具体的には、株式、債券、現金、金という4つの資産クラスを組み合わせ、それぞれが異なる経済状況で力を発揮するよう設計されています。
実際、永久ポートフォリオは「オールウェザー(全天候型)」とも呼ばれることがあり、嵐のような市場の混乱でも沈まない船のようなイメージです。
たとえば、リーマンショックのような危機的状況でも、株式が暴落する一方で金や債券が下支えとなり、損失を最小限に抑える効果が期待されます。
永久ポートフォリオはハリー・ブラウンが生み出した戦略
永久ポートフォリオは、ハリー・ブラウンという投資家が1980年代に生み出した戦略です。
彼は1970年代のインフレや経済不安を経験し、「どんな状況でも資産を守れる方法」を模索しました。その結果、株式、債券、現金、金を均等に配分するアイデアに行き着いたのです。初版の著書『Fail-Safe Investing』(1981年)でこの概念を発表し、以来、多くの投資家に影響を与えてきました。
誕生当時、アメリカは高インフレと経済停滞(スタグフレーション)に苦しんでいました。株式は低迷し、金が急騰する中、ブラウンは単一資産への依存が危険だと気づきます。そこで、歴史的なデータと経済理論を基に、4資産の組み合わせを考案。1980年代のテストでは、年平均8%近いリターンを記録し、その実力が証明されました。
1990年代以降、ITバブルやリーマンショックなど市場環境が激変する中で、永久ポートフォリオは安定性を発揮。2000年代初頭の株価暴落では金と債券が活躍し、2008年の危機でも損失を最小限に抑えました。現代では、金ETFやインデックスファンドの登場で実践が容易になり、個人投資家にも広がっています。
時代 | 主な出来事 | 永久ポートフォリオの動き |
---|---|---|
1970年代 | インフレとスタグフレーション | 金が急騰、株式低迷 |
2000年代初頭 | ITバブル崩壊 | 債券と金が下支え |
2008年 | リーマンショック | 全資産で15%下落に抑制 |
ハリー・ブラウンの投資哲学は、「予測不能な未来に備える」ことに集約されます。彼は、経済や市場の動きを正確に予測するのは不可能だと考えました。代わりに、どんなシナリオでも対応できるポートフォリオを設計したのです。その根拠は、歴史的な経済サイクルと資産クラスの特性にあります。
ブラウンは、経済には4つのフェーズがあると定義しました。
好景気、不況、インフレ、デフレ。それぞれで活躍する資産を組み合わせれば、リスクが分散されると主張します。
株式は好景気で成長し、債券はデフレや不況で安定。金はインフレで価値を保ち、現金はどの局面でも柔軟性を提供します。この理論は、現代ポートフォリオ理論(MPT)の「分散投資」に通じますが、より実践的でシンプルです。
永久ポートフォリオの黄金比率

永久ポートフォリオの核となるのは、4つの資産クラスを均等に近い形で配分することです。
ハリー・ブラウンが提案した黄金比率は、株式25%、長期国債25%、現金25%、金25%。このシンプルな4等分が、どんな市場環境でも機能する秘密とされています。
- まず、株式25%は経済成長の恩恵を受けるためのエンジンです。S&P500のような指数に連動するファンドを選べば、アメリカ経済の成長力を取り込めます。
- 一方、長期国債25%は安定の要。不況や金利低下時に価格が上昇し、株式の落ち込みをカバーします。
- 現金25%は、市場が混乱したときの避難所。流動性が高く、いつでも他の資産に振り分けられる柔軟性が魅力です。
- そして金25%は、インフレや通貨危機に対する保険。経済が不安定になると輝きを増します。
この配分のポイントは、各資産が異なるタイミングで活躍すること。
例えば、2000年代初頭のITバブル崩壊では株式が暴落しましたが、金と債券が上昇し、ポートフォリオ全体のダメージを軽減しました。逆に、インフレが進んだ1970年代には金が急騰し、他の資産の低迷を補ったのです。
このように、25%ずつの均等配分がリスクを分散し、安定したリターンを生み出す仕組みになっています。
資産 | 配分 | 主な投資対象例 |
---|---|---|
株式 | 25% | S&P500インデックス |
長期国債 | 25% | 米国10年国債 |
現金 | 25% | 短期国債や預金 |
金 | 25% | 金ETFや現物金 |
ただし、この黄金比率はあくまで基本形。投資家のリスク許容度や目標によっては、微調整が可能です。例えば、リターンを重視するなら株式を30%に増やし、現金を20%に減らすことも考えられます。ただし、あまり極端に偏ると「永久」の名にふさわしい安定性が損なわれるので注意が必要です。
重要なのは、各資産が互いに独立した動きを見せることで、ポートフォリオ全体のバランスが保たれる点です。
永久ポートフォリオの強みを最大限に引き出すには、定期的な「リバランス」が欠かせません。これは、市場の変動で歪んだ資産配分を元の比率に戻す作業です。
例えば、株式が好調で30%に増え、金が20%に減った場合、株式を売って金を買い足し、25%ずつに戻します。このシンプルな行為が、安定成長の鍵を握っているのです。
リバランスのメリットは2つあります。
まず、「高く売って安く買う」効果。値上がりした資産を売却し、値下がりした資産を買うため、自然と利益を確定しながら割安な資産を仕込めます。
次に、リスク管理。株式が過剰に増えると、次の暴落で大きな打撃を受けかねません。リバランスでバランスを保てば、極端な損失を避けられるのです。
リバランスの頻度は、年に1回や半年に1回が一般的。ただし、市場が急変した場合は臨機応変に対応するのも賢明です。
永久ポートフォリオ vs S&P500

投資を考えるとき、S&P500への全振りか、永久ポートフォリオかの選択に迷う人も多いはず。どちらも魅力的な戦略ですが、目指すゴールやリスク許容度で大きく異なります。
まず、リターン面。S&P500はアメリカ経済の成長を映す鏡であり、過去40年間の年平均リターンは約10~11%。
一方、永久ポートフォリオは6~7%と控えめです。単純計算で、100万円を30年運用すると、S&P500は約2000万円、永久ポートフォリオは約700万円。
成長を求めるならS&P500が圧倒的です。
しかし、2008年のリーマンショックではS&P500が50%超下落したのに対し、永久ポートフォリオは15%程度の下落で済みました。リスクを取れるか否かが分かれ目になります。
次に、ボラティリティ。S&P500は株式100%なので、市場の波にそのまま乗ります。
対して、永久ポートフォリオは4資産の分散効果で変動が抑えられ、精神的安定感があります。

項目 | 永久ポートフォリオ | S&P500 |
---|---|---|
年平均リターン | 6.5% | 10.8% |
最大下落率 | 15% | 51% |
変動率(年率) | 7% | 15% |
S&P500はハイリスク・ハイリターン、永久ポートフォリオはローリスク・ミドルリターンと表現できます。若くてリスクを取れる人や、経済成長に賭けたい人にはS&P500が魅力的。一方、安定重視で資産を守りたい人には永久ポートフォリオが適しています。
運用スタイルも異なります。S&P500は基本的に放置でOKですが、永久ポートフォリオはリバランスが必須。手間をかけたくないならS&P500、手を動かすのが苦でないなら永久ポートフォリオが向いています。
結局、どちらを選ぶかは「どれだけリスクを取れるか」と「何を優先するか」に尽きます。
永久ポートフォリオのメリットとデメリット
メリット
- 安定性: 4資産の分散により、経済危機でも大きな損失を回避できます。2008年の金融危機では、S&P500が50%超下落したのに対し、永久ポートフォリオは15%程度で踏みとどまりました。
- 全天候型: 好景気、不況、インフレ、デフレ、いずれの環境でも一定のリターンが期待できます。金がインフレで輝き、債券が不況で支えるなど、バランスが秀逸です。
- シンプルさ: 25%ずつの配分と定期リバランスだけで済むため、複雑な分析が不要。初心者でも取り組みやすいです。
デメリット
- リターンの限界: S&P500のような高い成長は望めません。過去40年で年平均6~7%に対し、S&P500は10%超。長期間では大きな差になります。
- リバランスの手間: 放置では効果が薄れ、定期的な調整が必要です。これが面倒だと感じる人もいるでしょう。
- インフレ時の弱さ: 金が25%あっても、急激なインフレでは十分な防衛が難しい場合があります。1970年代のような極端な物価上昇では、他の資産が足を引っ張りました。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
安定性 | 危機時の下落が小さい | – |
リターン | – | 高成長は期待できない |
運用 | シンプルでわかりやすい | リバランスの手間がかかる |
メリットは「守り」、デメリットは「攻め」の弱さと言えます。リスクを抑えたい人には理想的ですが、積極的に資産を増やしたい人には物足りないかもしれません。自分の目標と性格に照らし合わせて選ぶのが賢明です。
まとめ
永久ポートフォリオは、ハリー・ブラウンが提唱した全天候型の投資戦略。
黄金比率を維持するリバランスが鍵で、長期的な資産形成に適した堅実な選択肢です。
S&P500と比べるとリターンは控えめですが、リスクが低く、歴史的にも危機時の安定性が証明されています。メリットはシンプルさと守りの強さ、デメリットは高成長の限界と手間。
経済サイクルに柔軟に対応し、時間を味方に資産を育てたい人におすすめの戦略です!

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。