インデックス投資を語るとき、多くの人は「退屈だけど最強」という結論にたどり着きます。
市場全体をまるごと買い、コストを最小化し、長期でじっと持つ。これ以上合理的な方法があるのか、と。ところが投資の世界は、往々にして「もっといいものがあるのでは?」という誘惑に満ちています。アクティブファンド、ヘッジファンド、不動産、個別株、暗号資産。
学術的な研究、歴史的データ、投資家の実例を織り交ぜながら、「インデックス投資より優れた投資は存在するのか?」という問いに答えていこうと思います。
何をもって優れているとするか?

まず「優れている」とはどういうことかをはっきりさせる必要があります。
一般的に投資の成果を評価する際には以下の二つの指標が使われます。
指標 | 内容 |
---|---|
リターン | 投資から得られる利益の水準。株価上昇や配当を含む |
リスク調整後リターン | 同じ利益を得るためにどれだけリスクを取ったかを考慮したもの |
つまり、単に年利20%を出した投資があったとしても、それが「超高リスクの博打」であるならば、合理的に優れているとは言えません。投資を比較する上では、リターンの大きさとリスクの取り方をセットで考える必要があります。
研究結果でわかるインデックス投資の強さ

すでに「インデックス投資に勝つことの難しさ」は証明されています。代表的な研究は以下。
- マルキール(Burton Malkiel, 1973)『ウォール街のランダム・ウォーカー』
株価はランダムであり、長期的に市場平均を上回り続けるアクティブ投資家はほぼ存在しない
👉 書籍情報: ウォール街のランダム・ウォーカー - SPIVA(S&P Indices Versus Active)レポート
S&P Dow Jones Indices が毎年公開する調査
→ 米国株アクティブファンドの 10年後の勝ち残り率は約10〜15%程度しかない
👉 公式リンク: SPIVA Scorecard
SPIVAのデータは特に興味深く「長期でインデックスに勝ち続けられるアクティブ運用はほとんどない」ことがわかります。
では、なぜみんなインデックス投資ではない投資をするのか?

投資家の多くはインデックス一本槍で満足しません。理由はシンプルです。
- 退屈だから
インデックス投資は一度決めたら基本的に何もすることがありません。とにかく暇です。 - 勝者の物語に惹かれるから
ウォーレン・バフェットやピーター・リンチのように、市場平均を超えてきた伝説的投資家の存在が、「自分も」と思わせます。 - 短期的には勝てる人もいるから
数年だけならインデックスを上回れる投資法は確かに存在します。問題はそれを「長期で続けられるか」です。
個別株投資はどうなのか?

「インデックスよりも儲かる」と最もよく言われるのが個別株投資です。実際、Amazon や Apple を20年前に買って持ち続けた人は、インデックス投資家を大きく上回るリターンを得ています。
しかしデータを見ると、事情はかなり複雑です。
- Bessembinder (2018) の研究
米国株1926〜2016年のデータを分析すると、わずか4%の銘柄が市場全体のリターンを生み出していたことが判明しています。
👉 論文: Do Stocks Outperform Treasury Bills?
つまり、大多数の個別株はインデックス以下で終わるということです。たった数銘柄を「当てる」ことができればインデックス以上に勝てるけれど、それはとても高い難易度だということです。
不動産投資や代替資産はどうか?

株式インデックス以外でしばしば比較対象になるのが不動産や金、あるいは最近なら暗号資産です。
資産 | 特徴 |
---|---|
不動産 | 安定した賃料収入。インフレ耐性あり。ただし流動性が低く管理コスト大。 |
金 | 株と相関が低い安全資産。ただし長期リターンは株に劣る。 |
暗号資産 | 爆発的なリターンの可能性。極端なボラティリティと規制リスクあり、安定性がない。 |
不動産は株式と違ってキャッシュフローが明確に見えるため、心理的に安心感を持つ人が多いのですが、流動性や維持費用を考慮すると「市場全体に分散した株式インデックス」ほど効率的とは言えません。
ヘッジファンドはどうか?

「最強の投資家軍団」として語られるのがヘッジファンドです。アルゴリズムや天才マネージャーが集まり、複雑な戦略を駆使して市場を超えようとします。しかし現実はそうはうまくはいきません。
- カーネギーメロン大学などの研究では、2005〜2016年のヘッジファンド平均リターンは S&P500を下回っていた。
- 高い手数料(年2%+成果報酬20%など)が投資家のリターンを大きく削ってしまう。
もちろん例外的にジョージ・ソロスやレイ・ダリオのような大成功者はいますが、それはまさに「例外」です。
ここまでを踏まえると
ここまでを踏まえると以下のことが言えます。
- 短期的にインデックスを超える投資は存在する
- しかし長期的・統計的に見ると、ほとんどの投資はインデックスに劣後する
- 真に「優れた投資」とは、単なる高リターンではなく、リスク・コスト・持続可能性を含めて優れているかで判断すべきである
まとめ
「インデックス投資よりも優れた投資は、理論的には存在するが、現実的にはほとんどの人が到達できない」ということがわかっています。
インデックス投資は最も再現性が高く、学術的に裏付けられ、コストも低いものです。だからこそ世界中のプロが「結局はインデックスが最適」と認めるわけです。
ただし、人間は退屈を嫌いますし、短期的なリターンに魅力を覚えます。
そのため、「インデックス投資を軸に、遊びの部分でアクティブファンド投資や個別株投資を取り入れる」という折衷案に落ち着く人が多いのです。

資産運用に興味がある恐竜。様々な国や商品に投資。投資歴は長い。基軸はインデックス投資での運用。短期売買の頻度は少なく、長期目線での投資をコツコツと実施。